6歳児を死に至らせても懲役4年、判決が「軽すぎる」と感じた人へ 神戸地裁は何をどう評価したのか?

6歳児を死に至らせても懲役4年、判決が「軽すぎる」と感じた人へ 神戸地裁は何をどう評価したのか?

●1 共謀の範囲(争点1)について

本件当日の朝食前の暴行(第1暴行)の際に、叔父が、叔母Aと叔母Bに対して被害者の手足を押さえるように、母親に対しては被害者を鉄バイプで叩くようにそれぞれ命令し、同命令に従い、叔母Aは被害者の両手を持ち、叔母Bは被害者の両足首をつかみ、母親が被害者の背中を鉄バイフで殴打したのであるから、これによって、叔父と被告人3名との間で、被害者に対する暴行の共謀が成立したものと認められる。

そこで、叔母Aと叔母Bの両被告人が直接暴行に加わっていない朝食後の暴行(第2暴行)について、上記共謀の範囲に含まれるか検討する。

第1暴行と第2暴行についてみると、同一の被害者に対する暴行であるところ、同一日の午前中に行われており、場所も被告人ら宅の1階リビングダイニングと同一である。

また、いずれの暴行も、大便を失禁したり、自分の思いどおりに動かなかったりした被害者に対して、叔父が苛立ち行ったもので、動機、経緯が共通しており、叔父が母親に命令して又は自ら行ったもので、鉄パイプが用いられるなど、態様も類似している。

そして、本件当日以前から、叔父が自ら又は被告人3名に命令して、被害者に暴行を加え、その暴行を被告人3名が黙認するということが日常的に繰り返されており、本件当日も同じ流れによって被害者に対する暴行が加えられたと認められる。

これらの事情からすれば、第2暴行は、第1暴行を前提としてなされた、被害者に対する暴行として一連一体のものと評価するのが相当であり、第1暴行とは別に、新たな犯意、共謀に基づき行われたものということはできず、第1暴行における共謀に基づく行為と認められる。

叔母A及び叔母Bとも、共謀関係から離脱したと評価されるような行動を何らとっていないことからすると、叔父と被告人3名との間で、第1暴行の際、被害者に対する暴行の共謀が成立し、同共謀に基づき、第1暴行及び第2暴行が行われたものと認められ、叔母A及び叔母Bは、第2暴行についても共同正犯としての責任が認められる。

●2 適法行為の期待可能性の有無(争点2) について

(1)期待可能性について

期待可能性の理論は、責任能力の判断とは異なり法律上の根拠があるものではなく、その行為が犯罪の構成要件に該当する違法なものであって、かつ、行為者に故意も責任能力も認められるような場合には、その行為を非難し得る場合がほとんどであり、非難もできないという事態は極めて例外的な場合と考えられる。

そこで、期待可能性の理論による責任の阻却は、本件の行為者の具体的な物理的状況、心理的強制状況等を前提として、一般人が実際にその行為者の状況に置かれた場合に、適法行為に出る期待可能性がないといえるような極限的な状態の場合にのみ認められるべきと解される。

物理的状況についてみると、叔母Aと叔母Bが身体を拘束されているというような事情はなかったものの、本件当日は家中に鍵などが取り付けられている状態であり、家から外に出るのは困難であった。

窓を割るなどして外部に助けを求めめることなどは不可能ではなかったが、家の中には物が多く、窓にたどり着くまでに一定の時間を要する上、音を聞きつければ叔父がすぐに追いかけてくることも考えられる状況であり、現実的な選択肢ではなかった。

また、携帯電話機も叔父の管理下にあり、110番通報等をして助けを求めることも困難な状況であった。

暴力による支配の状況については、6月には、叔父による暴力が一層激しくなっていった上、暴力を止めようとすれば止めた側もそれまで暴力を受けていた側も、より激しい暴力を受けるような状況であった。

他方で、叔母A及び叔母Bは、いずれも、本件以前に叔父の暴力から他の家族をかばったり、叔父から被害者を叩くよう命令された際には、力を加減して叩いたりするなど、命令通りの行動をとらないこともできていた。

また、叔母A及び叔母Bは、叔父の命令に従うかどうかについても、叔父の命令に従って自身が暴力を振るった方が、自身や他の家族が叔父からの暴力を受けないで済むことや、力を加減することもでき、叔父からのより激しい暴力を避けることができるなどと自ら判断していた。

心理的強制についてみると、前記認定のとおり、叔母A及び叔母Bとも、叔父の自分が「神」、「警察官のトップ」であるなどの言葉を信じており、叔父のマインドコントロール下にあって、外部の人々が叔父の味方であると信じていた。

(2)

傷害致死について、叔母Aの適法行為の期待可能性、すなわち、叔母Aが、叔父に被害者の手を押さえるよう命令されたときに適法行為が期待できたかについて検討する。

外部に助けを求めることは、施錠等の物理的状況や、叔父のマインドコントロール下にあり、外部の人間は叔父の味方であると思っていたことなどからすれば、叔母Aにとって、非常に困難であったといえる。

他方、マインドコントロールは外部に助けを求められないというようには作用しているものの、叔父の命令に従って被害者の手を持つという判断が、実際には叔父に操作されていたとまではいえず、従わないと、自身や他の家族が暴力を受けたり、被害者がより激しい暴力を受けたりするという、暴力による支配の影響が大きかった。

このように、叔母Aは、叔父の暴力による支配によって、その命令には逆らい難い状況であったとは認められる。

しかし、叔母Aは、本件以前に叔父の命令通りの行動を取らないこともできていた上、本件当日も、叔父の命令に従って被害者の手を持ったものの、その後、被害者の頭を抱えるような姿勢を取っている。

この行動は、叔母Aによれば、母親の振り下ろす鉄パイプが被害者の頭に当たりそうであったため、被害者の頭を守ろうとしたとのことであって、叔母Aは、現実の状況を前提として、叔父の命令に反する判断ができていたのであり、叔父の命令に盲目的に従っていた訳ではない。

また、叔父から被害者の手を押さえるように命令された時点では、叔母Aや叔母Bに対して暴力は加えられておらず、経験上、叔父の命令に従わなければ暴力を受けるかもしれないという予測の下、自分の判断により被害者の手を持つに至ったものと認められ、叔父の命令に従わなければ、自身や叔母Bに直ちに重大な危害が及ぶことが確実といえるような状況ではなかった。

さらに、第1暴行終了後、2階において、叔母Aは、叔父から前日に被害者が叔母Aと叔母Bに押さえられて叩かれたのだろうなどと言われた際に、これを否定するなど、叔父の意向に反した言動を取ることができている。

この時点では、叔母Aは叔父から鉄パイプで叩かれており、より叔父の意向には逆らい難い状況であったにもかかわらず上記言動を取っていたものであり、それより前で、叔父からの暴行もなかった第1暴行の時点であればなおさら、叔父の命令に反する行動を取れる可能性はあった。

そうすると、叔母Aは、本件当日、朝から被害者の体調が悪いことを認識していた上、叔父に被害者の手を押さえるよう命令された時、叔父が自ら又は被告人3名に命じて被害者に暴行を加えることが日常的に繰り返されていたというそれまでの経緯等からすれば、その後、被害者が鉄パイプで殴られる等の暴力を受けることも認識し得たものといえるから、叔父の命令に従わないで被害者の両手を持たないことや、叔父に対し、被害者に対する暴力を止めるよう説得するなどの手段を期待することが可能であったといえる。

また、死体遺棄についても、叔母Aは、叔父から被害者を捨てに行くと言われ、被害者の死体の入ったキャリーケースを持ち出し運ぶよう命令されたときに、それを拒否したり、叔父に対し、死体を捨てるのを止めるよう説得したりするなどの手段を期待することが可能であったといえる。

したがって、叔母Aの置かれた具体的な状況を前提として、一般人がその状況に置かれた場合に、叔父から命令されるままにそのとおり従うほかなく、被害者の手を持ったり、被害者の死体の入ったキャリーケースを運んだりする以外に全く選択肢がないような極限的な状態にあったとまではいえず、適法行為の期待可能性はあり、その程度が相当程度低下していたものと認められる。

(3)

傷害致死についての叔母Bの適法行為の期待可能性、すなわち、叔父に被害者の足を押さえるよう命令されたときに適法行為が期待できたかについて検討する。

叔母Bについても、施錠等の物理的状況や、叔父のマインドコントロール下にあることから、外部に助けを求めることが非常に困難であったことは、叔母Aと同様である。

また、叔母Bが、叔父の命令に従って被害者の足をつかむという判断が、実際には叔父に操作されていたとまではいえず、暴力による支配の影響が大きく、その影響により叔父の命令には逆らい難い状況にあったことも、叔母Aと同様である。

しかし、叔母Bも、本件以前に叔父の命令通りの行動を取らないこともできていた上、本件当日も、叔父の命令に従って被害者の足をつかんではいるものの、その態様は、被害者の足首を親指と人差し指でつかむというものであり、被害者が動かないよう押さえるという叔父の命令が意図する持ち方とは異なっている。

叔母Bは、潔癖症のためなるべく被害者に触りたくなかったから、そのような持ち方をした旨述べるが、叔父の意図に沿わない持ち方や力加減となる行動を自ら判断して取ることができていた。

そうすると、叔母Bは、現実の状況を前提として、叔父の命令に一部反する判断ができていたのであり、叔父の命令に盲目的に従っていたとはいえない。

また、叔父から被害者の足を押さえるよう命令された時点では、叔母Bや叔母Aに対して暴力は加えられておらず、叔父の命令に従わなければ、自身や叔母Aに直ちに重大な危害が及ぶことが確実といえるような状況ではなかったことも、叔母Aと同様である。

そうすると、叔母Bも、本件当日、朝から被害者の体調が悪かったことを認識していた上、叔父に被害者の足を押さえるよう命令された時、それまでの経緯等からすれば、その後、被害者が鉄バイブで殴られる等の暴力を受けることを認識し得たものといえるから、叔父の命令に従わないで被害者の両足をつかまないことや、叔父に対して、被害者に対する暴力を止めるよう説得するなどの手段を期待することができた。

また、死体遺棄についても、叔母Bは、被害者の死体を捨てに行くため被告人ら宅を出る際に、同行を拒否したり、叔父に対し、死体を捨てるのを止めるよう説得したりするなどの手段を期待することが可能であったといえる。

したがって、叔母Bの置かれた具体的な状況を前提として、一般人がその状況に置かれた場合に、叔父から命令されるままにそのとおり従うほかなく、被害者の足をつかんだり、被害者の死体を捨てに行くことに同行したりする以外に全く選択肢がないような極限的な状態にあったとはいえず、適法行為の期待可能性はあり、その程度が相当程度低下していたものと認められる。

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