6歳児を死に至らせても懲役4年、判決が「軽すぎる」と感じた人へ 神戸地裁は何をどう評価したのか?

6歳児を死に至らせても懲役4年、判決が「軽すぎる」と感じた人へ 神戸地裁は何をどう評価したのか?

●量刑の理由の要旨

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本件、被告人3名と叔父が共謀の上、母親の子で、叔母A及び叔母Bら共犯者の甥である被害者(当時6歳)に対し、暴行を加えて死亡させ、その死体を遺戦した傷害致死及び死体遺棄の事案である。

被告人3名の量刑を検討するに当たっては、裁判員量刑検索システムも参照した。

その検索条件は、犯行全体について、「(処断罪)傷害致死」、「(動機)児童虐待又はその他の家族関係」、「(処断罪と同一又は同種の罪の件数) 1件」、「(被告人から見た被害者の立場) 子又はその他の親族」、「(量刑上考慮した前科の有無) すべてなし」である。

「被告人から見た被害者の立場」は、叔母A及び叔母Bの量刑を検討する際には「その他の親族」とし、母親の量刑を検討する際には「子」とした。

また、共犯者間における被告人3名の立場を踏まえ、傷害致死について、動機を限定せず、「共犯関係等」について、「実行共同正犯、従属的」とした量刑データも参照した。

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犯行全体の犯情をみると、量刑の中心となる傷害致死について、被告人らの犯行により、未だ就学前の6歳という幼い被害者が死亡した。

被害者は、本来であればその成長を見守ってくれるはずの存在である母親や、叔父・叔母から、後述のとおり強度かつ理不尽な暴行を加え続けられた末に死に至ったもので、肉体的苦痛のみならず、その絶望感や、将来が奪われた無念さは察するに余りある。大変痛ましいというほかなく、結果は誠に重大である。

被告人らは、朝から体調の悪く弱っていた被害者に対し、無理やりうつ伏せにさせた上、両手両足を持ち、硬い鉄パイプで背中を多数回殴り、更に、首をつかんで持ち上げたり、鉄バイブで背中を多数回殴ったり、背中の上に乗って多数回飛び跳ねたり踏みつけたりした、成人4名が、幼く、弱って抵抗も十分にできない被害者に対して、一方的かつ強度な暴行を繰り返し加えたもので、態様は危険性が高く、悪質な犯行である。

その上、被告人らは、日常的に被害者に暴行を加えていたものであり、突発的な犯行ではなく、常習的な犯行であって、一層悪質である。

加えて、被告人らは、犯行の発覚を免れるため、被害者の死体を折り曲げてキャリーケースに入れて隠匿した上、草むらの中に投げ捨て遺棄していることも踏まえると、犯行全体の犯情は相当悪質である。

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そこで、各被告人個別の犯情についてみる。

(1)本件各犯行の主犯は叔父である。

叔父は、マインドコントロールや暴力等によって被告人3名を支配し、母親に執着して、嫉妬心等から母親の子である被害者に対して、自ら又は被告人3名に命令して日常的に暴行を加えていたところ、本件当日も、体調が悪く大便を漏らしたり、自分の思い通りに動かなかったりした被害者に苛立ち、叔母A及び叔母Bに手足を持たせた上、母親に二度にわたって鉄パイプで殴らせたばかりか、自らも首をつかんで持ち上げたり、背中の上に乗って飛び跳ねたり踏みつけたりするなどの強度の暴行を加えている。

また、被害者の死体を遺棄することを言い出し、折り曲げてキャリーケースに入れたり、同キャリーケースを運ばせたりしたのも叔父である。

共犯者間でその責任が最も重いのが叔父であることは明らかである。これに対し、被告人3名は、いずれも叔父に命令されて本件各犯行に及んだもので、従属的な立場にあった。

(2)叔母A及び叔母Bは、マインドコントロールや暴力によって叔父に支配されていたところ、叔父に命令されて本件各犯行に加わったもので、その立場は従属的であった。

叔母Aは被害者の両手を持ち、叔母Bは被害者の両足をつかんでいるが、いずれも被害者を強く押さえつけていたものではなく、両被告人による暴行それ自体の危険性は高くはない。

また、両被告人は、その後の暴行には直接関与していない。そして、両被告人は、叔父の命令に従わなければ、自身や被害者を含む他の家族がより激しい暴力を加えられると考えて各暴行に及んだものであり、被害者への加害を積極的に意図していたものではない。

前記認定のとおり、両被告人の期待可能性の程度が相当低下していたことからすれば、叔父の命令に従って本件各犯行に加わったことについて、両被告人の意思決定を強く非難することは困難である。

そうすると、本件各犯行の全体の犯情は重いものの、叔母A及び叔母Bについては、その従属的な立場や、暴行態様、期待可能性の程度等に照らし、同種事案の量刑傾向も参照すると、執行猶予を付す余地もあるといえる。

(3)母親は、肉体的暴力や性的暴力によって叔父に支配されていたところ、叔父に命令されて本件犯行を行ったものであり、その立場は従属的であった。

もっとも、母親は、体調が悪く、弱っていた被害者に対し、二度にわた硬い鉄パイプでその背中を多数回殴打したもので、力加減等をしているものの、被害者が痛いと叫んでいることなどから相応の力で殴打していたといえ、その態様は危険で悪質である。

なお、検察官は、母親の暴行が被害者の死因に直結したと主張する。

しかし、証拠によれば、被害者には、致命的な損傷はないものの、背中に鈍体による打撲、圧迫、擦過による皮下組織の高度挫滅等の複数の損傷が認められ、外傷性ショックにより死亡したと特定されているところ、叔父の暴行によるものと認められる体幹部圧迫や頸部圧迫の死因に対する寄与の度合いの評価は厳密にはできないとしていること、叔父が被害者の背中で飛び跳ねるなどした暴行も純体による暴行に当たり得ること、母親は、その供述によれば、鉄バイブを椅子に当てようとしたり、力を弱めて殴打しようとしたりしていたことなどに照らせば、母親の暴行が、被害者の死因に直結したとまでは認められない。

確かに、犯行に至る経緯等をみると、母親は、叔父に強く執着されて行動も制限され、家族の中に味方がいないと感じながら、叔父から激しい肉体的暴力や性的暴力を繰り返し加えられてきたものである。

このように、母親は、叔父に暴力により強く支配されており、本件当日、叔父から被害者を鉄パイプで叩くよう命令されると、それに従って、力加減等して自ら暴行を加えることで、被害者に対する激しい暴行を避けようなどと考え、本件犯行に至ったものである。

母親は叔父に命令されなければ本件犯行には及んでいないものといえ、このような経緯は、母親に有利に考慮すべきである。

また、母親は、叔父から激しい肉体的暴力や性的暴力を受けており、被害者としての一面があることも、母親にとって酌むべき事情となる。

しかし、これらの事情を考慮しても、母親は、母親という被害者を最も守るべき立場にありながら、被害者が朝から体調が悪く、暴行を加えられ次第に弱っていることも認識しながら、何らの看護等をせず、叔父による暴行を止めなかったばかりか、その命令に従って二度にわたって鉄パイプで殴打し、被害者が痛いと叫んでも止めず、救護等を試みることもなく、被害者の死亡後、死体を草むらに遺棄するのに同行している。

母親が、叔父の命令に従って本件各犯行を行ったことについて、その意思決定は、強く非難するほかない。

以上によれば、母親について、その犯情は叔母A及び叔母Bよりも相当重く、同種事案の量刑傾向も参照すると、その従属的な立場や経緯等を踏まえても、執行猶予を付す余地はなく、実刑に処すほかない。

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その上で、各被告人の一般情状についてみる。

(1)叔母A及び叔母Bは、いずれも、甥である被害者を死亡させてしまったことを強く後悔していることがうかがわれる上、特に叔母Aについては記憶の欠落等がみられるが健忘によるもので、それぞれ、記憶の限りにおいて事実関係を供述するなど、自分なりに反省の態度を示している。

また、両被告人とも前科前歴がなく、それぞれ福祉の専門家が情状証人として出廷し、社会復帰後は、精神科病院で入院治療を受けさせることや、医療機関や行政とも連携して福祉的に支援する態勢を整える旨証言している。

(2)母親は、我が子を死亡させたことを強く後悔し、深く悲しんでいる。母親は、犯行後には警察官を死体の遺棄場所まで案内しており、記憶の限りにおいて事実関係を供述するなど、自分なりに反省の態度を示している。

また、母親の家庭環境が不遇であったこと、母親に前科前歴がないこと、福祉の専門家が情状証人として出廷し、社会復帰後は、母親の特性や知的障害等を踏まえ、後見制度を利用するなどして体制を整え、福祉的な支援をしていく旨述べていることは母親に有利に考慮できる事情である。

なお、本件の背景として、行政の対応に問題があったことは、本件で鑑定を行った精神科医師らも指摘しているところである。

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以上の事情を考慮すると、叔母A及び叔母Bに対しては、主文の刑に処した上、社会内において、自ら犯した罪と向き合い、どのように行動すれば本件のような痛ましい事件を防げたのか考えて反省を深め、更生することを期待して、その刑の全部の執行を猶予するのが相当と判断した。

また、母親に対しては、有利な犯情及び一般情状を十分に考慮しても、その犯情の重さに照らせば実刑は免れず、有利な事情は刑期の点で考慮することとして、主文の刑を量定した。

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