顎骨腫瘍の治療
顎骨腫瘍の治療は、良性腫瘍と悪性腫瘍によって異なります。
良性腫瘍では手術が基本ですが、悪性腫瘍では手術以外にも化学療法や放射線治療などを組み合わせた治療が検討されます。それぞれの病気の状態や患者の健康状態などを考慮して適切な治療法を選択します。
エナメル上皮腫や歯牙腫の治療では、手術により腫瘍を摘出します。
エナメル上皮腫は再発しやすく、顎骨の壁に穴を空けて腫瘍の縮小と周辺骨組織の修復を図ったり、腫瘍と一緒に顎骨を切除したりする場合があります。
腫瘍の大きさにより切除する顎骨が広い場合は、口の機能の低下や顔の変形につながる可能性があります。この場合には、骨移植やチタンプレートによる再建術が検討されます。
歯牙腫では、腫瘍の摘出が基本です。ただし、自覚症状がみられない場合は積極的に手術をおこなわず、経過観察となるケースもあります。
腫瘍を摘出した顎骨では、骨の再生がみられますが、骨の傷をおおう瘢痕(はんこん)組織の形成によって骨の再生が妨げられます。
そのため良性腫瘍の治療では、速やかな顎骨の修復のために瘢痕組織を繰り返し除去する処置がおこなわれるケースがあります。
悪性の顎骨腫瘍では、腫瘍の摘出と合わせて顎骨の切除が検討されます。
腫瘍の広がりや進行度に応じて、再建手術や術前の化学療法、術後の放射線治療を組み合わせるケースもあります。
顎骨腫瘍になりやすい人・予防の方法
顎骨腫瘍を発症しやすい人は、それぞれの腫瘍の種類によって異なります。
疫学調査によると、歯原性腫瘍全体のうち半数程度が29歳以下であり、性別による差はないと報告されています。
歯原性膿瘍の中で最も多いエナメル上皮腫は、20代に最も発症しやすく高齢者や幼児にはみられにくい疾患です。男性が全体の6割を占めており、下顎骨(下あごの骨)に現れやすいと言われています。
良性腫瘍では再発をきたすケースが少なくありません。
とくにエナメル上皮腫は、再発しやすいと言われています。
定期的に医療機関を受診し、経過観察に努めることが予防に効果的です。
エナメル上皮腫についで多い歯牙腫は、10~20代に発症しやすく、上顎骨(上あごの骨)や下顎骨の前歯に現れやすい疾患です。
歯牙腫の存在により永久歯が生えてこないケースが報告されています。
永久歯の生え変わりが遅い場合には歯牙腫が原因のこともあるため、専門医による早期の診断が推奨されます。
悪性腫瘍である顎骨の骨肉腫は、一般的な骨肉腫よりも発症年齢が高く、30~40歳代に発症しやすいと言われています。
放射線治療を受けたことが原因で、顎骨の扁平上皮がんや骨肉腫などの悪性腫瘍を発症したケースも報告されています。リンパ腫や上顎洞がんなどの放射線治療歴がある人は、顎骨腫瘍を発症するリスクがあるため、定期的な経過観察が重要です。
関連する病気
エナメル上皮腫歯牙腫
骨肉腫扁平上皮がん
リンパ腫
上顎洞がん参考文献
エナメル上皮腫の分子病理学東京歯科大学病理学講座
小児の下顎骨に発生した大きな集合性歯牙腫の1例 日本口腔外科学会雑誌
下顎骨に発生した放射線誘発骨肉腫の1例 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
歯原性嚢胞と歯原性腫瘍 耳鼻咽喉科展望
北海道大学 口腔顎顔面外科学教室 顎骨良性腫瘍
顎骨原発骨肉腫の画像診断 耳鼻咽喉科展望
慶応義塾大学病院 医療・保健情報サイト 口腔腫瘍
北海道大学歯学部口腔診断内科 口腔外科疾患 エナメル上皮腫
日本口腔外科学会 良性腫瘍
下顎骨原発骨肉腫症例の検討 頭頸部外科
九州大学病院 顔面口腔外科 良性腫瘍・嚢胞
放射線誘発性上顎骨骨肉腫例 耳鼻咽喉科臨床学会
胃癌を同時重複した放射線誘発と考えられる上顎骨肉腫の1症例 日本口腔外科学会雑誌

