喉頭軟化症とは、声帯や空気の通り道である「喉頭」の組織が柔らかく弱いために、呼吸をする際に気道を狭めてしまう病気です。
喘鳴や呼吸困難を引き起こす疾患のことを喉頭軟弱症と呼びます。
そこで、本記事では、喉頭軟化症の原因と症状を解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「咽頭軟化症」を発症する原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
喉頭軟化症はどんな病気?

喉頭軟化症とはどんな病気なのか知りたいです。
喉頭軟化症とは、喉頭の組織が柔らかく弱いために、気管を塞いだり狭めてしまったりする病気のことです。のどの前側の部分を喉頭と呼びます。ここには気管があり、通常であれば問題なく呼吸ができます。しかし、喉頭軟化症となると喉頭部分の組織が柔らかく弱いために、呼吸をする時に喉頭が動いてしまうのです。
また、この病気は3つの分類に分けられます。
披裂部型
喉頭蓋披裂ひだ短縮型
喉頭蓋型
いずれのタイプも喉頭がのどの中に引き込まれてしまう形となり、気管を塞いだり狭めてしまうため、呼吸困難を引き起こす場合があります。
乳幼児の喘息として、最も多い原因となる病気であり、非常に危険です。
赤ちゃんがなる病気なのですね…。
乳幼児の病気と先述しましたが、成人の場合でもこの病気を発症することはあります。乳幼児の場合、喘息の原因はこの喉頭軟化症によるものが最も多く、30%~75%がこの疾患によるものです。ほとんどの場合、吸気性喘息と呼ばれる息を吸う時に現れる喘息であることがわかっており、生後10日~14日以内で現れる傾向です。
また、症状のピークは6ヶ月~8ヶ月となります。おおよそ1~2歳までに改善がみられるのが一般的です。
一方で、成人が後天的にかかる喉頭軟化症の場合、循環障害・感染症などさまざまな要因によって引き起こされます。こちらの場合は、乳幼児にかかる病態とは全く異なります。
喉頭軟化症は何が原因で発症しますか?
乳幼児の場合、この病気は先天的なものです。胎児期で完成するはずだった軟骨構造が、完成しなかったことが原因で引き起こされると考えられています。通常、喉頭は軟骨でできており、胎児期4ヶ月程度の時点で完成します。しかし、喉頭上にある喉頭蓋軟骨については、他の喉頭軟骨よりも約4ヶ月程度遅くなる傾向です。そのため、出生時に未成熟な状態で生まれることがあるのです。
これが乳幼児の場合の原因となります。一方で、大人が発症する場合は、原因は後天的なものです。
先述したような循環障害や感染症に加えて、次のような原因が考えられます。
加齢
脳血管障害
筋萎縮性側索硬化症
脳血管障害とは、くも膜下出血や脳梗塞などのことで、何らかの原因で脳血管が破綻する病気です。
筋委縮性側索硬化症とは、筋肉を動かす・運動を司る神経が障害を受ける病気です。だんだんと筋肉が衰えていく病気で、のどの筋肉もその中に含まれます。
これらの原因により、喉頭軟化症を発症するのです。
喉頭軟化症の症状を教えてください。
主な症状としては、次のようなものが挙げられます。吸気性喘鳴による呼吸困難
チアノーゼ
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
気管が狭くなったり・塞がれてしまったりしたことにより、吸気性の喘息を起こすことが主な症状です。
その他には、チアノーゼを発症することがあります。これは、血液中の酸素量が低下し、皮膚の色が青くなってしまう症状です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に呼吸が10秒以上停止する症状です。特に、成人の喉頭軟化症において発症する傾向があります。
喉頭軟化症が進行するとどうなりますか?
この病気が進行すると、喘息だけにとどまらず、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。合併症としては、次のようなものが代表的です。哺乳障害
漏斗胸
胃食道逆流とは、胸腔内圧の上昇によって、胃酸が逆流してしまう症状です。また、喘鳴が強いために、哺乳障害に伴う体重増加不良を認める場合があります。
乳幼児の場合、仰向けの姿勢・泣いている時・興奮している時・哺乳している時などでも喘息が強くなる傾向があります。そのため、上手く哺乳が行えず、哺乳障害を患う可能性が高いです。
漏斗胸とは、胸の中心がへこんだ形となる症状です。
編集部まとめ

喉頭軟化症は、乳幼児からかかる病気であり、呼吸困難など引き起こす可能性がある恐ろしい病気です。
しかし、治療は難しいものではなく、成長とともに完治する可能性のある病気です。一方で、重症となると手術が必要な場合もあります。
症状に合わせて適切な治療を受けるためにも、自己判断で放置することなく、専門の医療機関にかかりましょう。
参考文献
喉頭軟化(軟弱)症|国立研究開発法人国立成育医療研究センター
筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2)|難病情報センター
喉頭軟化症|東京女子医科大学東医療センター新生児科

