
右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をコミカルな漫画で描くキクチさん(@kkc_ayn)。母親の自宅介護と看取りをテーマにしたコミックエッセイ『20代、親を看取る。』は、自宅介護の現実や、親との死別と向き合う中で揺れ動く感情が描かれ、大きな反響を集めた。
母を看取ってから約2年後、今度は父が病に倒れてしまう話だ。母の介護・看取りを経たことで落ち着いて対応できることは増えたものの、一人っ子として頼れる家族がいないキクチさん。今回は、病に負けまいと力強く立ち向かう父の姿について話を聞いた
■「ありがとう」の涙と、「生きてやるんだ」というエネルギー



面会時、父は「病には負けないぞ」とでも言わんばかりに力強くキクチさんの手を握り、筆談で意思疎通を図ろうとする。会話はできないものの、必死に生きようとする父の気持ちが伝わってくるだけでも安心感があっただろう。
「こんなに大変ななかで『ありがとう』という言葉が最初に出てくるのってなかなか難しいことですよね。私ならどうするんだろう、と考えちゃいます。父の行動には『生きてやるんだ』というエネルギーが溢れているなと思いました」と、キクチさんは父の姿に感銘を受ける。
震える文字で書かれた「ありがとう」と、父の涙。この先のことを考えるとキクチさん自身も悩みは尽きないが、父を前にすると自然とポジティブな言葉が出てくるところに“親子の支え合い”を感じる。
「父は涙を流すとき、上を向いて涙をこらえながら『こんちくしょー!泣かされちゃったぜ!』って我慢しながら泣くんです。だから私は、このとき初めて父がぽろぽろと涙を『普通に』流す姿を見て、さすがの父でも心の中では不安でいっぱいだし、辛いし、弱ってるんだなと思いました」と、父の隠された感情を知った瞬間を語る。
父の性格を考慮し、「やってやろうぜ!」「ファイト!」「100歳まで生きたおばあちゃんの息子なんだから遺伝子最強だろ!」と鼓舞すると、みるみるうちに涙が止まり、父の心も切り替わったようだ。
医療監修=a0ba
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