虫垂炎の治療法別の再発リスクと合併症

虫垂炎で投薬治療を行う場合に想定されるリスクを教えてください
抗菌薬による保存的治療の主なリスクは、治療がうまくいかずに入院中に手術が必要になる可能性と、いったんよくなっても数年以内に再発しやすいことです。海外の大規模研究では、抗菌薬治療を選んだ患者さんの一部が初回から数ヶ月のあいだに手術へ切り替わり、さらに長期的にみると最終的に手術を受ける割合が数割程度に達すると報告されています。
また、抗菌薬そのものの副作用として下痢や発疹、まれに重いアレルギー反応が起こることもあります。投薬治療を選んだ場合は、退院後も腹痛や発熱が出たときに自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関を受診することが大切です。
虫垂炎の手術にはどのような合併症がありますか?
虫垂切除術は安全性の高い手術ですが、少ないながら合併症が起こることがあります。代表的なものは、傷やお腹の中の感染、出血、癒着による腸閉塞などです。特に穿孔を伴う虫垂炎や腹膜炎では、腹腔内膿瘍と呼ばれる膿のたまりが生じやすくなります。また、腹腔鏡手術でも開腹手術でも、ごくまれに周囲の腸や血管などの臓器損傷が起こる可能性があります。さらに、全身麻酔に伴う肺炎や血栓症など、全身的な合併症にも注意が必要です。入院中に説明された注意点を守り、異変を感じたらすぐに医療スタッフに伝えることが重要です。
虫垂炎は手術を行えば再発しませんか?
虫垂切除術では炎症を起こしている虫垂そのものを取り除くため、同じ虫垂炎を繰り返すことは原則としてありません。ただし、ごくまれに虫垂の根元の部分が少し残り、その残った部分に炎症が起こる断端虫垂炎という状態が報告されています。
一方、投薬治療だけで虫垂を残した場合は、前の質問で述べたように、数年以内に再発して手術が必要となる方が少なくありません。治療後に新たな腹痛や発熱が続く場合は、虫垂炎の再発だけでなく、癒着や別の消化器の病気が原因のこともあるため、自己判断で様子をみず、早めに医師へ相談することをおすすめします。
編集部まとめ

虫垂炎は若い年代にも多い身近な病気ですが、放置すると腹膜炎や敗血症につながり、命に関わることがあります。現在も虫垂切除術が確立された標準治療であり、多くの患者さんにとって根治が期待できる方法です。一方で、条件を満たす単純性虫垂炎では抗菌薬による保存的治療が選択肢となる場合もあることが、大規模臨床試験からわかってきました。ただし、その場合は再発や途中で手術が必要になるリスクを受け入れる必要があります。
どの治療法が適しているかは、画像所見や全身状態、年齢や持病、仕事や家庭の事情など、一人ひとりの背景によって変わります。インターネットの情報だけで判断せず、疑問や不安は遠慮なく医師や看護師に質問し、自分が納得できる治療方針を一緒に考えることが大切です。突然の腹痛や発熱が続くときは我慢せず、早めの受診を心がけてください。
参考文献
『急性虫垂炎に対する保存的治療奏効の予測』(日本大腸肛門病学会誌/J-STAGE)
『急性虫垂炎』(慶應義塾大学病院KOMPAS)
『知って得する病気の話 急性虫垂炎とは(外科)』(彦根市立病院)
『Diagnosis and treatment of acute appendicitis: 2020 update of the WSES Jerusalem guidelines』(World Journal of Emergency Surgery)
『急性虫垂炎』(独立行政法人国立病院機構 奈良医療センター 健康だより)

