介護における便失禁の対処法と対策

トイレの周辺環境はどのように整えればよいですか?
便失禁への対応では、トイレ環境の整備が欠かせません。移動しやすく安全な動線を確保することで、排泄の不安の軽減につながります。例えば、トイレまでの経路にある段差をなくし、転倒防止のために手すりや滑りにくいマットの設置がおすすめです。夜間の排泄時には、足元を照らす常夜灯を使うとよいでしょう。
また、便座の高さが合っていないと姿勢が安定せず、排便がうまくいかないことがあります。体格に合わせて補助便座や足台を用い、自然な前傾姿勢を保てるようにしましょう。
ペーパーやおしりふき、着替えは手の届く位置にまとめ、慌てず動作できる環境を整えることも大切です。さらに、トイレを常に清潔に保ち、臭いや汚れを防ぐことで、心理的な抵抗感を減らしやすくなります。
日常生活で工夫できることを教えてください
便失禁の予防や軽減には、日々の生活習慣を整えることが重要です。まず、排便リズムを安定させるために、毎日同じ時間にトイレへ行く習慣をつけましょう。特に、朝食後は腸の動きが活発になるため、排便に適したタイミングです。
食事面では、食物繊維を含む野菜や穀物、豆類を意識的に摂取し、水分をしっかり取ることで便通が安定します。反対に、脂質や刺激の強い食品を摂りすぎると下痢を起こすことがあるため注意が必要です。
衣服は、トイレに行く際に素早く脱ぎ着できるものを選び、ベルトや複雑なボタンを避けるとよいでしょう。また、便失禁用の吸水パッドや防水シーツを活用すれば、外出や就寝時の不安の軽減につながります。こうした工夫を積み重ねることで、快適で自立した生活を保ちやすくなります。
便失禁を改善させる運動はありますか?
便失禁の改善を目指すうえで、骨盤底筋を鍛える運動は効果が期待できます。骨盤底筋は、直腸や膀胱など骨盤内の臓器を支える筋肉で、便を我慢する力に関わる重要な部分です。加齢や出産によって筋力が低下すると、肛門を閉じる力が弱まり、便漏れが起こりやすくなります。
代表的な方法は骨盤底筋体操(ケーゲル体操)で、肛門を締めるように力を入れ、5〜10秒程度キープしてからゆっくり緩めます。これを1日数回繰り返すことで、筋肉の働きの改善につながります。
骨盤底筋体操は、寝たまま、座ったまま、立ったままなど、姿勢を選ばず実践できるのもメリットです。
加えて、ウォーキングや軽いストレッチで下半身の血流を促すことも大切です。無理をせず、医療スタッフや理学療法士の指導を受けながら継続することが改善の近道となるでしょう。
編集部まとめ

ここまで、介護における便失禁について解説してきました。
要点を整理すると、以下のとおりです。
便失禁は、加齢や疾患、筋力・神経の低下など複数の要因が関係して起こる
漏出性や切迫性、混合性などタイプによって症状や対応方法が異なる
トイレ環境の整備、生活習慣の見直し、骨盤底筋の運動が改善の基本となる
便失禁は恥ずかしいことではなく、知識と対策によって改善が期待できる症状です。本人だけでなく介護を担う方にとって、本記事が参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
知っておきたい尿もれ・便もれの基礎知識|国立がん研究センター 中央病院
日本大腸肛門病学会雑誌「便失禁専門外来の試み」|J-STAGE
川崎高津診療所紀要「高齢者の便失禁を考える」|J-STAGE
リハビリテーション・エンジニアリング「排便障害のリハビリテーションと機器」|J-STAGE

