友人の提案は慰謝料の「相殺」
祥子の助言は、 「クロス請求(相殺)」。私が夫の不倫相手に、佐藤さんは私の夫・健一に、それぞれ同額の慰謝料を請求する。そして、法的な拘束力を持つ誓約書を作成し、今後は接近できないようにするというものでした。
実際にはお互いがお金を払い合う形になるため、家庭単位で手元に残る金額は変わらないかもしれません。しかし、法的に「不倫という不法行為に対する賠償金」として処理し、公正証書に残すことで、将来もし離婚することになっても、その慰謝料はサレた側の「特有財産」として守られるようにできます。
多額の債務を公的に負わせることで、彼女に「自分の犯した罪」を生涯忘れることのできない楔として刻み込むことができるでしょう。
「脳内お花畑の不倫女も現実を見ざるを得ないわね」
私は覚悟を決め、佐藤さんに連絡を取りました。私たちの関係に終止符を打つために、四人で集まって話し合う場を設けてほしいと。
冷たい会議室での対峙
数日後、窓のない冷たい空気の流れる貸し会議室に4人が集まりました。 健一はうなだれ、佐藤さんは疲れ切った表情をしています。女はまだ現実を直視していないような、浮ついた目をしていました。
私はテーブルの上に、これまで集めてきた証拠のすべてを広げました。健一との隠密なやり取り、旅行の記録、そして密会の証拠写真。それは私自身の心をも切り裂くような、あまりにも残酷な光景でした。佐藤さんにこれを見せるのは心苦しかったけれど、彼に真実を突きつけ、目を覚まさせ、こちら側に立ってもらうためには避けて通れないプロセスでした。
証拠を一枚一枚確認していく佐藤さんの手が、小刻みに震えていました。
「……家ではウソばかり重ねてこんなことを…」 彼は絶句していましたが、やがて顔を上げ、私を真っ直ぐに見つめました。
「教えてくれて、ありがとうございます。美香さん。これで、僕も覚悟が決まりました」
彼は、自分の妻が語っていた「魔が差した」という言い訳が真っ赤な嘘であったことを悟ったようでした。私はその姿を見守りながら、青ざめて震える彼女に対し、心の中で静かに、そして冷徹に告げました。
「私たちの家庭を壊そうとした代償、法と数字できっちり払ってもらいます」

