1.マーキング
人の場合、五感の中でも特に視覚から多くの情報を得ているのが一般的です。しかし猫の場合は、視覚よりも嗅覚からより多くの情報を得ています。そのため、猫は自分の縄張り内の要所に自分の体を擦り付けてニオイを残します。
ニオイを残すことで、他の猫に対して「ここは私の縄張りだ!」とアピールし、自分自身もそのニオイを嗅ぐことで「ここは自分の縄張り内だ」と安心感を得ているのです。このように、自分のニオイを付けて印をつける(マークする)ことを「マーキング」と言います。
マーキングに使うのは、体の臭腺から分泌される皮脂です。臭腺がたくさんあるのは、口の周辺、顎の下、額などの頭部や肛門の周囲、肉球、尻尾の付け根などです。そのため、壁や家具、椅子の足などの出っ張っているような部分に、臭腺を擦り付けるのです。結果として、何度もマーキングされる場所は、猫の皮脂で次第に黒ずんできます。
ただし、爪研ぎや未去勢のオス猫による強烈なニオイの尿によるマーキングと比べれば、皮脂をこすりつけるのはさほどひどい被害にならずにすむマーキングなので、許容できる範囲まではできるだけ拭かず、そのままにしておいてあげましょう。
なお、買ってきたばかりの買い物袋や届いたばかりの宅配の箱に体を擦り付けるのも、マークすることでこれらは自分の縄張りの一部であり、すなわち自分のものだと主張しているのだと考えられています。
2.挨拶
猫たちは、年齢、性別、健康状態や、どこに行き何をしてきたのかなどの、かなり詳細な個人的な情報を、ニオイを嗅ぎ合うことで交換し合います。特に肛門周辺の臭腺から多くの情報が得られるため、猫たちはお互いのお尻のニオイを嗅ぎ合うことが多いです。
また、ニオイを嗅ぎ合うだけではなく、挨拶としてお互いにニオイを付け合ったりもします。お互いのニオイをつけあうことで、自分たちのニオイが混じり合ったオリジナルのニオイが作り出され、それが安心材料となってお互いの距離感が縮まるようです。猫は、単独生活をする動物だと考えられていましたが、必要に応じて仲間を作ることができる程度の社会性も、身につけていることの証なのかもしれません。
外の知らないニオイを付けてきた帰宅後や、石鹸やシャンプーのニオイがついたお風呂上がりの飼い主さんに擦り寄り、猫が自分の体をスリスリと擦り付けるのは、この挨拶の意味合いが濃いようです。飼い主さんに改めて自分のニオイをつけることで、家族としてのオリジナルのニオイを取り戻させ、家族としての安心感を得ているのでしょう。

