交通事故のあと、「なんとなく首や肩が痛い」「首に違和感や凝りがある」「手足にしびれが出てきた」と感じた経験のある人もいるのではないでしょうか? じつはそれは「むち打ち症」かもしれません。適切な対応をせずに放置してしまうと、長期的な後遺症につながることもあります。そこで、むち打ち症の本当の怖さについて、整形外科医の松本淳志先生(まつもと整形外科)に詳しく話を聞きました。
※2025年6月取材。

監修医師:
松本 淳志(まつもと整形外科)
2005年、福岡大学医学部卒業。済生会福岡総合病院で初期研修後、福岡市民病院、九州大学病院、福岡赤十字病院などで研鑽を積み、2020年5月、福岡県久留米市に「まつもと整形外科」を開院。整形外科クリニック1院・整骨院3院・ピラティススタジオ2施設を運営。クリニックには約80名、グループ企業を合わせると約100名のスタッフが在籍。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本フットケア学会認定フットケア指導士。
むち打ち症って? 医師が解説!!
編集部
むち打ち症とは、どのような怪我なのでしょうか?
松本先生
むち打ち症は、車の座席にヘッドレストが無かった時代に交通事故で首が前後に鞭のように大きくしなるために「むち打ち」と呼ばれるようになりました。レントゲンでは異常が写りませんが、筋肉や靭帯、神経といった首まわりの組織が損傷を受け、痛みやしびれなどの症状が出てきます。
編集部
むち打ち症の症状にはどのようなものがありますか?
松本先生
首の痛みや腰の痛み、肩こり、手足のしびれなど、症状は多岐にわたります。中には頭痛や耳鳴り、めまい、不眠、集中力の低下、倦怠感など、一見関係なさそうな症状を訴える人もいます。事故直後だけではなく、数時間後から数日経ってから症状が出ることもしばしば見られます。
編集部
レントゲンでは異常が写らないということは、どこも損傷していないということですか?
松本先生
むち打ち症では多くの場合、レントゲン検査では異常が発見されませんが、実際はレントゲンに写らない筋肉や靭帯、神経などが損傷しています。事故に遭った多くの人が、この画像に写らない、目に見えない痛みに悩まされます。
編集部
むち打ち症は、どれくらいで治るものなのでしょうか?
松本先生
軽度であれば3カ月程度で症状が落ち着くことが多いのですが、事故の程度によっては症状が重症化して、半年〜1年以上かかることもあります。痛みやしびれなどが長く続く場合、後遺症として残るリスクもあるため、早期の適切な治療がとても重要になります。
むち打ち症を放置するとどうなる?
編集部
むち打ち症を放置してしまうと、どうなるのでしょうか?
松本先生
むち打ち症を放置すると、肩こり、頭痛、腰痛、手足のしびれなどの後遺症が残り、長期にこの後遺症に悩まされ、日常生活に支障をきたすケースも多く見られます。症状を長引かせないためには、早期の適切な診断と継続的な治療が大切です。
編集部
整形外科ではどんな治療が受けられるのですか?
松本先生
薬物治療や物理療法(電気治療)、リハビリテーション(以下、リハビリ)をおこないます。薬物療法では外用薬(湿布)だけではなく、鎮痛薬や神経痛を治療する薬を使用したり、自律神経症状が強い場合には漢方薬を併用するなど症状に合わせて薬を使い分けます。リハビリは特に効果が高いため、当院でも「人の手」による手技での専門性の高いリハビリで痛みの軽減や機能回復を目指して、医師や理学療法士が連携しながら治療を進めています。
編集部
しっかり治療すれば治るものなのでしょうか?
松本先生
交通事故に実績のある整形外科を早期に受診し、適切な治療と専門性の高いリハビリを受けることで、多くの人は改善します。リハビリをおこなうことで、「首や肩の筋肉の凝りを和らげる」「筋肉や神経の血流を改善して痛みを軽減する」「首や肩などの関節の動きをスムーズにする」など、さまざまな効果が期待できます。一方で、適切に治療したとしても、後遺症が残ってしまう場合もあります。

