HbA1cを改善するには、食事療法と運動療法の組み合わせが効果的です。糖質の質と量の見直し、食べる順番の工夫、有酸素運動やレジスタンス運動の実践など、日常生活に取り入れやすい方法があります。この記事では、血糖コントロールに役立つ具体的な食事のポイントや運動の種類、無理なく続けるための工夫について解説します。生活習慣の改善は、着実な一歩から始められるでしょう。

監修医師:
谷本 哲也(ナビタスクリニック川崎)
1972年、石川県生まれ。鳥取県育ち。1997年、九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック理事長・社会福祉法人尚徳福祉会理事・NPO法人医療ガバナンス研究所研究員。診療業務のほか、『ニューイングランド・ジャーナル(NEJM)』や『ランセット』、『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』などでの発表にも取り組む。
【資格】
日本内科学会認定総合内科専門医・日本血液学会認定血液専門医・指導医
HbA1cを下げるための食事療法
HbA1cを改善するうえで、食事療法は基本的かつ効果的な手段の一つです。血糖値の上昇を穏やかにし、適正体重を維持することで、インスリンの効きを良くする可能性があります。
糖質の質と量を見直す
食事によるHbA1c改善の中心は、糖質の質と量をコントロールすることです。白米、パン、麺類などの精製された糖質は血糖値を急激に上昇させやすい傾向があるため、玄米、全粒粉パン、蕎麦など食物繊維を多く含む未精製の糖質に置き換えることが推奨されます。
食物繊維は糖の吸収を緩やかにし、食後血糖値の急上昇を抑える働きがあるとされています。また、1回の食事で摂取する糖質の総量を減らすことも重要です。主食の量を通常の半分から2/3程度に減らし、その分を野菜やタンパク質でカバーすることで、満足感を保ちながら血糖値を改善できる可能性があります。
糖質を完全に制限する極端な方法は、長期的な継続が難しく、栄養バランスを崩すリスクもあるため、医師や管理栄養士の指導のもとで適切な量を設定することが大切です。間食についても、糖質の多い菓子類や清涼飲料水は避け、ナッツ類やチーズ、ヨーグルトなど血糖値への影響が少ない食品を選ぶようにしましょう。
食べる順番と食事のタイミング
食事内容だけでなく、食べる順番や食事のタイミングも血糖コントロールに影響を与える可能性があります。野菜や海藻、きのこ類などの食物繊維を多く含むおかずを先に食べ、次にタンパク質である肉や魚、その後に主食である炭水化物を摂る「ベジファースト」の食べ方は、食後血糖値の上昇を緩やかにする効果がある程度は期待できます。この方法は特別な食材を用意する必要がなく、日常的に実践しやすい点が利点です。また、よく噛んでゆっくり食べることで、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できるでしょう。
食事のタイミングについては、1日3食を規則正しく摂ることが基本とされています。朝食を抜いたり、夕食が遅い時間になったりすると、血糖値の変動が大きくなりやすく、HbA1cの改善を妨げる要因となる可能性があります。夕食は就寝の3時間前までに済ませ、夜間の血糖値上昇を避けるようにしましょう。さらに、食事と食事の間隔が長い場合、次の食事で炭水化物を大量に短時間で摂ると血糖値が急上昇しやすくなるため、お腹が空いたからといってドカ食いしないことも重要です。なお、まだ研究段階ではありますが、カロリーの摂りすぎを防ぐため、あえて絶食の時間を長くとるファスティングも近年大きな注目を集めており、糖尿病のより適切な食事方法も今後新たな進展が期待されています。
食事療法における注意点と継続のコツ
食事療法は効果的ですが、誤った方法や極端な制限は逆効果になることがあります。長期的に継続するためには無理のない計画と工夫が必要です。
栄養バランスを崩さない工夫
HbA1cを下げることに意識が向くあまり、特定の栄養素を過度に制限したり、偏った食事になることは避けるべきです。糖質を控える際も、タンパク質やビタミン、ミネラルを十分に摂り、全体のバランスを保つことが重要です。特にタンパク質は筋肉量の維持に欠かせず、筋肉が減ると基礎代謝が低下し血糖コントロールが悪化する可能性があります。肉や魚、卵、大豆製品を毎食の中で適量取り入れ、野菜は1日350gを目標に、緑黄色野菜と淡色野菜をバランスよく摂取しましょう。
脂質も適度な量は必要で、オリーブオイルや魚の不飽和脂肪酸は動脈硬化予防に役立つとされています。カロリー制限を行う場合でも、極端に減らすと栄養不足や低血糖のリスクが高まるため、医師や管理栄養士と相談しながら適切なエネルギー量を設定することが望ましいです。また、高齢の方や制限の多い食事を続けている場合は、ビタミンB群やビタミンD、葉酸、鉄分、亜鉛、カルシウムが不足しやすくなります。血液検査で栄養状態を確認し、必要に応じてサプリメントの使用について医師と相談するといいでしょう。
継続可能な食習慣の確立
食事療法を長く続けるには、生活スタイルに合った無理のない方法を選ぶことが大切です。完璧を目指して強いストレスを感じるよりも、できることから少しずつ改善していく方が継続につながります。外食の多い人は、丼物や麺類の単品ではなく、野菜やタンパク質が含まれる定食を選ぶなど、日常の中で工夫を取り入れましょう。
家族の協力も心強い支えになります。同じ食事を共有することで負担感が減り、健康的な習慣を続けやすくなります。食事記録をつけることも有効で、食べたものと体調や血糖値の変化を記録することで、自分に合う食パターンが把握できます。スマートフォンのアプリを使えば、無理なく続けられるでしょう。近年では、24時間リアルタイムで血糖値を測定する持続血糖測定器を活用することも可能になっています。
定期的に管理栄養士の指導を受けると、生活に合わせた助言が得られ、モチベーションの維持にも役立ちます。また、特別な日や外食では過度に制限せず楽しむ柔軟さも必要です。その前後で調整すれば大きな影響は避けられます。完璧を求めすぎず、7割程度の達成を目指す姿勢が、無理なく長く続けるための大きなポイントです。

