現代社会では生活習慣の変化により、糖尿病やその手前の「糖尿病予備軍」と診断される人が増えています。放置すると本格的な糖尿病へ進行するだけでなく、合併症によって生活の質を大きく損なう恐れがあります。そこで、糖尿病予備軍の基礎知識と早期に受診することの重要性について、医師の團先生(宇部内科小児科医院)に話を聞きました。
※2025年9月取材。

監修医師:
團 茂樹(宇部内科小児科医院)
日本大学医学部第一内科(現・内科学系血液膠原病内科学分野。以下同)入局。同大学第一内科大学院を修了し、医学博士号を取得。カナダ・オンタリオがん研究センター留学を経て、那須中央病院内科部長、宇部内科小児科医院副院長、千代田漢方クリニック院長、宇部内科小児科医院専任院長などを歴任。現在は宇部内科小児科医院院長。日本内科学会総合内科専門医。
糖尿病ってどんな病気? 医師が解説!
編集部
糖尿病とはどのような病気ですか?
團先生
糖尿病とは膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの分泌遅延および分泌反応低下の結果として大切なエネルギー源であるブドウ糖が、筋肉を始めとする体の各組織細胞にうまく取り込むことができず、血液中に溢れている状態です。長期間放置すると全身の血管が傷つき、さまざまな合併症を引き起こす原因となります。
編集部
糖尿病にも種類があると聞きました。
團先生
代表的なのは1型糖尿病と2型糖尿病です。1型は免疫の異常でインスリンがほとんど分泌されなくなる病気で、若い人にも起こります。2型は生活習慣や遺伝的要因が関与し、中高年に多くみられます。このほか妊娠糖尿病などと呼ばれるタイプもあります。
編集部
糖尿病になるとどんな症状がでるのでしょうか?
團先生
初期は自覚症状に乏しいのが特徴です。進行すると「のどが渇く」「尿の回数が増える」「体重が減る」といった症状が現れることがあります。さらに悪化すると、視力低下や感覚障害など、日常生活に支障をきたす症状がでてきます。
編集部
糖尿病で、目にも症状がでるのですか?
團先生
そうなんです。糖尿病そのものよりも恐ろしいのがその合併症で、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症のいわゆる三大合併症が代表的です。手足のしびれや失明、人工透析の原因になるなど、生活の質を大きく下げてしまいます。また動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる合併症を引き起こすこともあるため、糖尿病は早期発見と早期治療が重要です。さらには、糖尿病の一歩手前の人も、発症を防ぐ(遅らせる)ことを意識する必要があります。
糖尿病予備軍とは? 早めに知っておきたいサイン
編集部
「糖尿病の一歩手前」とはどのような状態を指すのですか?
團先生
血糖値が正常より高いものの、まだ糖尿病の診断基準には達していない状態の、いわゆる「糖尿病予備軍」の人がこの状態です。健康診断で「血糖値が少し高め」と指摘された人は、この段階にあたります。この時点ではすでにインスリン分泌能力が低下していたり、分泌が遅れていたりといった兆しがすでにあるため、個人的には「一歩手前」ではなく、「糖尿病に片足を一歩入れている」と考えてもらいたいと思っています。自覚症状がなく、気づかないまま放置されることが多いので注意が必要です。
編集部
糖尿病予備軍を放っておくとどうなりますか?
團先生
放置すれば多くの人が数年以内に糖尿病へ進行します。血糖値が高い状態が続くと血管はじわじわと傷み始め、合併症のリスクも高まります。糖尿病になる前の段階で生活習慣を見直すことが、将来の健康を守るために非常に大切です。
編集部
どうしたら、糖尿病予備軍であることに早期に気づけますか?
團先生
血糖値が気になる食事をした際に、食後約1時間後における尿糖の有無を調べてください。わずかでも陽性なら、糖尿病予備軍の危険があります。空腹時の採尿では、早期発見はできません。尿糖検査テープはネットで安く手に入ります。尿糖が陽性になったら、先延ばしにせず、きちんと医療機関にかかるようにしましょう。健康診断で血糖値の異常を指摘されたときはもちろん、体重が急に減った、強いのどの渇きや頻尿があるなどの症状がでた場合は、早めに受診してください。また家族に糖尿病の人がいる場合もリスクが高いため、積極的な検査をおすすめします。
編集部
糖尿病予備軍の段階でできる対策とはどのようなものですか?
團先生
主な対策は食事療法と運動療法です。特別な薬を使わずに生活習慣を改善することで、多くの人は糖尿病への進行を防げる可能性があります。生活の質を保ちながら取り組める方法なので、早めに始めることをおすすめします。

