脳幹出血の代表的な症状や特徴
脳幹は生命維持に不可欠な機能が集中しているため、脳幹出血は突然発症し、非常に重い症状が現れることが多いです。少量出血でも意識障害や両手足の麻痺が生じることがあります。突然死につながる可能性もあるため、以下のような症状には注意が必要です。
病院以外での処置には限りがありますが、もし倒れて吐いており、呼吸がしづらそうな場合は、横向きに寝かせ、吐いたもので窒息しない姿勢にしてください。すみやかに救急車を呼び、脳神経外科か神経内科がある救急病院へ搬送してもらいましょう。
意識状態の悪化
脳幹出血では、突然**呼びかけに反応しなくなったり、意味のある応答ができなくなったりする「意識障害」が見られます。軽度から、呼びかけても全く反応がない重篤な意識障害(昏睡など)まで、出血量や部位によって様々です。
脳幹には意識を保つための網様体賦活系という領域があり、大出血でここが障害されると深い昏睡状態に陥るため、出血量が多い場合に意識障害が急速に進行します。
呼吸の障害
脳幹出血では、呼吸をコントロールする中枢(呼吸中枢)にも影響が及ぶため、異常な呼吸や呼吸の停止、いびきなどが生じることがあります。
具体的には、呼吸が浅く速くなったり、不規則になったり、自分で呼吸ができなくなる(自発呼吸の停止)こともあります。顔色が急に悪くなり、呼吸音がおかしい場合、普段いびきをかかない人が急に大きないびきをかき始めたら要注意です。
もし呼吸が止まっている場合には、直ちに心肺蘇生法を開始するのが望ましいですが、まずは救急車を要請し、救急隊からの指示を仰ぎながら可能な範囲で対応してください。
手足の麻痺
脳幹には、手足を動かすための重要な神経の通り道(錐体路など)が通っているため、出血によって手足の麻痺が生じます。特徴的なのは、出血が橋(脳幹の真ん中の部分)に及ぶと左右両方の手足が麻痺してしまい、「四肢麻痺」となることです。出血が小さく片側だけなら、片側の手足が麻痺することもあります。麻痺の程度は、軽い力の入りにくさから、全く動かせない状態まで様々です。
激しい頭痛・嘔吐
脳内出血ではしばしば激しい頭痛や吐き気・嘔吐が起こります。脳幹出血でも、特に発症直後に「今まで経験したことのない激しい頭痛」や突然の吐き気に襲われることがあります。これは出血による急激な脳圧(脳の中の圧力)の上昇や、くも膜下腔(脳の周りの空間)への血液の漏れによる頭痛と考えられます。意識がはっきりしている段階では、患者さんは頭を抱えてうずくまり嘔吐することが多いです。
脳神経症状
脳幹には、眼の動きや顔・喉の筋肉を動かす「脳神経」の中枢が数多く存在するため、小さな出血でもこれらに対応する症状が現れます。代表的なものとしては、複視(ものが二重に見えること)、顔面神経麻痺(顔の片側が動かない)、嚥下障害(食べ物・飲み物が飲み込みにくいこと)などです。他にも、難聴、発声障害、激しいめまいなど、様々な症状が組み合わさって現れることがあります。
脳幹出血の主な原因
高血圧
脳幹出血の最大の原因は高血圧です。長年の高血圧で脳の細い動脈の壁が動脈硬化(血管が硬くなること)でもろくなり、脳幹部へ栄養を送る小さな動脈が破裂して出血が起こります。高血圧性の脳出血は、塩分の摂りすぎな食生活や喫煙など、生活習慣の影響が大きいです。
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれ、自覚症状なく進行します。ある日突然、脳出血として発症し、頭痛・麻痺・意識障害など急な症状が出ます。
日頃から血圧が高めと言われる方は、発症前に内科(循環器内科)で治療を受けてください。脳出血を起こしてしまった場合は、脳神経外科の治療領域です。
高血圧の方で頭痛や神経症状が現れたら、ためらわず救急車を呼びましょう。慢性的な高血圧は、日頃からの管理が肝心で、定期受診と薬の服用を怠らないようにしましょう。
脳動静脈奇形
生まれつき脳内の動脈と静脈が異常な塊(ナイダス)を形成している脳動静脈奇形は、若い方の脳出血の重要な原因です。高血圧とは異なり、血管の構造異常で、20~40代で初めて脳幹出血を起こすことがあります。症状がない場合もありますが、出血すると突然の麻痺や意識障害を引き起こします。出血しなくても、てんかん発作を起こしたり、慢性的な頭痛を呈することもあります。疑われる場合は脳神経外科を受診します。MRIや血管造影検査で診断が可能です。一度出血していれば緊急性が高いですが、未出血の場合でも、将来的な出血リスクがあるため、計画的な治療が検討されます。脳幹部の脳動静脈奇形は、部位によっては手術や放射線治療でナイダスを閉塞させる治療が行われることもあります。
海綿状血管腫
海綿状血管腫は、血管がコブ状にまとまった良性の血管の塊で、脳幹にも発生することがあります。一般に、脳幹の海綿状血管腫は、家族内で発生する例もあり、比較的若い段階で小さな出血を繰り返す傾向があります。少量の出血を繰り返すと、徐々に麻痺や嚥下障害など神経症状が蓄積することがあります。
抗凝固療法・血液凝固異常
心房細動などで抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を飲んでいる方や、血友病などの凝固障害がある方では、脳内出血のリスクが高まります。血液が固まりにくいため、少しの血管の損傷でも大出血につながりやすいからです。
抗凝固薬を服用中に脳出血を起こすと、出血量が多くなる傾向があり、頭蓋内圧(頭の中の圧力)が急激に上昇するため、重篤になりがちです。また、外傷後に普通なら起こらないような脳出血が起きることもあります。
基礎疾患の治療で循環器内科や血液内科にかかっているはずなので、処方医に脳出血リスクについて相談しましょう。必要に応じて薬の調整や血圧管理が行われます。
抗凝固薬を服用中に頭を打った場合や、少しでも神経症状が出た場合は、念のため救急受診してください。出血が疑われる場合、薬の効果を打ち消す治療(ビタミンKや凝固因子製剤の投与など)を早急に行う必要があります。

