「圧倒的な軽さ」が、ドロドロに濃くなった高校野球を救う
別の問題もあります。清く正しいイメージを増幅させる効果を音楽に求めることは、政治的に利用されやすい土壌があると言えるからです。それは、特定のリズムやメロディやハーモニーが醸す善良さを社会全体の善とイコールで結びつける“空気”を生み出します。「イイじゃん」が軽薄であり、阿久悠が詞を書き谷村新司が作曲した「今ありて」が崇高だと断じる年長者の言い分には、このような同調圧力を助長する“空気”が強く影響を及ぼしているのです。
その意味でも、「イイじゃん」は救世主だと言えるでしょう。
圧倒的に薄っぺらで軽い入場行進曲が、過剰に美化されドロドロに濃くなってしまった高校野球を希釈する。それこそが、今この時代にM!LKが選ばれた真の意義なのかもしれません。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

