「この再審法で裁かれたくない」冤罪被害者や家族ら、再審法見直し試案に反対声明

「この再審法で裁かれたくない」冤罪被害者や家族ら、再審法見直し試案に反対声明

冤罪事件の被害者やその家族、支援者は1月21日、法制審議会刑事法部会で議論されている再審制度の見直しについて「現行制度より後退しかねない」として、前日に公開された試案に反対する共同声明を公表した。

この日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見が開かれ、袴田事件で再審無罪が確定した袴田巌さんの姉、袴田ひで子さんのほか、日野町事件、今市事件などの関係者、映画監督の周防正行さん(再審法改正をめざす市民の会共同代表)らが登壇した。

冤罪被害者が早期に救済される再審制度の実現を求め、法改正の原点に立ち返るよううったえた。

●「証拠の全面開示」や「検察官の不服申し立て禁止」通らず

共同声明は、袴田事件や福井女子中学生殺人事件などで、捜査機関による証拠の捏造や不開示が明らかになったにもかかわらず、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てなどにより、救済が長期化してきたと指摘した。

現在、法制審部会で進められている再審制度見直しの議論については「冤罪被害者の期待を裏切り、再審制度を後退させかねない内容だ」として、強い危機感を示している。

とくに問題視されているのが、「再審における証拠開示の範囲」や「再審開始決定に対する検察官の不服申し立ての可否」の2点だ。

冤罪事件の被害者らは、無罪の手がかりとなる証拠の全面開示を一貫して求めてきた。しかし、現行法では、裁判所が検察に証拠開示を勧告しても、検察に応じる義務はない。

こうした問題を受けて、法制審部会では証拠開示のあり方が主要な争点の一つとなっていたが、今回の試案では、証拠開示の対象が「請求人が主張する新証拠に関連する証拠」に限定された。また、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てについても、禁止されていない。

声明は「新証拠を見つけるためにこそ証拠開示が必要だ」と強く批判。あわせて、検察官による抗告が再審手続きを長期化させ、高齢化や獄死を招いてきた実態があるとして、不服申し立ての禁止をあらためて求めた。

会見する冤罪被害者や家族ら

●袴田ひで子さん「法律や国より、まず人間を守って」

会見に臨んだ袴田ひで子さんは、法制審部会に対して、証拠開示や抗告の禁止をうったえてきたが、「伝わっていません」と試案を厳しく批判。次のように語った。

「残念ながら、こちらの思うようにいきませんでした。役所の仕事ですので、法律を守るため、国を守るためにやっている。私は、まず人間を守ってもらいたいと思います。

何をするにも国を守るといって、法律でも何でも無理に通します。そうではなくて、冤罪は人間が起こしたことなんです。人間として、検討をぜひお願いしたいと思います」

また、周防さんは、アメリカの陪審裁判で使われる言葉を引用し、「あなたたち自身が裁かれたい方法で私たちを裁いてほしい」とうったえた。改正されようとしている再審法のもとで裁かれることについては「僕は絶対に嫌です」と明言。

「こんな状況で公正な裁判を受けられるとは到底信じられません。委員のみなさまには、ぜひ私たちの声に耳を傾けてほしい」

声明には、再審無罪が確定した事件の当事者や、現在も再審を求めている当事者・家族らが名を連ねている。「声を上げられない多くの冤罪被害者が存在する」として、社会的な理解と支援を広く呼びかけている。

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