大腸カメラは、大腸がん予防のために何歳から受けるべきかご存じですか? 医師が解説

大腸カメラは、大腸がん予防のために何歳から受けるべきかご存じですか? 医師が解説

近年、大腸がんの若年化が進み、30代や20代でもポリープやがんが見つかるケースが増えています。「自分はまだ大丈夫」と思っているうちに、がんが進行してしまうことも少なくありません。では、大腸がんの予防には何歳から検査を受けるべきなのでしょうか。また、どのような人が注意すべきなのでしょうか。今回は、大腸がんのリスクや大腸カメラ(大腸内視鏡)の受診タイミング、予防に役立つ生活習慣について大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニック院長の笹島圭太医師に詳しく解説してもらいました。

笹島 圭太

監修医師:
笹島 圭太(大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニック)

千葉大学医学部卒業後、消化器内科として臨床経験を重ね、昭和大学横浜市北部病院で超拡大内視鏡の開発や論文発表を行う。さいたま赤十字病院では内視鏡センター長を務め、大腸・食道・胃のESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を通算2,800例以上施行と早期がんに対する内視鏡診断と治療を専門とする。穿孔率0.02%、一括切除率99.8%と高い安全性と根治性を実現してきた。胃・大腸内視鏡検査は5万件超の経験を有する。日本消化器内視鏡学会指導医・社団評議員・和文誌査読委員、日本消化器病学会指導医・学会評議員、日本消化管学会指導医、がん治療認定医、日本内科学会認定医、医学博士。昭和大学横浜市北部病院兼任講師。

大腸がんが増えている? 今、知っておきたい背景

大腸がんが増えている? 今、知っておきたい背景

編集部

近年、大腸がんが増加しているというのは本当ですか?

笹島先生

はい、大腸がんは日本でも増加傾向にあります。40歳代から増え始め、50歳代から急増します。最近では30代、さらには20代の若年層でも大腸がんや腫瘍性ポリープが見つかるケースが増えています。生活習慣の変化や食生活の欧米化が一因とされております。このように、大腸がんの「若年化」が進んでいる点は、今あらためて注目すべき点です。

編集部

どのような人が大腸がんになりやすい傾向があるのでしょうか?

笹島先生

リスクが高いのは、牛肉、豚肉や羊肉などの赤肉やハム・ベーコン・ソーセージなどの加工肉の過量摂取、肥満、運動不足、アルコール摂取、喫煙が挙げられます。WHO(世界保健機関)及びIARC(国際がん研究機関)は2015年の時点で既に、赤肉および加工肉の摂取により大腸がんのリスクが増加するという声明を発表しております。WCRF(世界がん研究基金)によると週に3回で調理後重量にして350~500g未満に摂取量を抑えるように推奨されています。IARCは、加工肉を「発がん性のある十分な証拠がある」というグループ1に、赤肉を人間に対しておそらく発がん性があるというグループ2Aに該当するという分類も行っております。加工肉の摂取は、なるべく減少する方向で検討いただくのが望ましいでしょう。赤肉に関しては、重要なたんぱく源でもありますから徒にリスクを恐れるのではなく、年齢に応じた適正体重を鑑みて、お米・麺類・パンなどの炭水化物、肉・魚・卵・豆類などのたんぱく質、野菜、果物などをバランスよく摂取することが重要です。アルコール摂取に関しては23g/日を摂取している場合は、大腸がんのリスクが高まります。男性の場合は、10g/日増えるごとに大腸がんリスクが約10%増大するという報告があります。この結果はお酒を摂取して顔が赤くなるなどの遺伝的要因の解析がなされていないので注意が必要です。23gとはビール633ml(大瓶)、日本酒180ml(1合)、焼酎120ml、ワイン2杯(グラス換算)、ウイスキー60ml(ダブル)に相当します。また、血縁者に大腸がんの既往がある方は、一般の方よりリスクが高くなるといわれています。こうした背景を持つ方は、年齢にかかわらず早期から検査を検討すべきです。大腸がんは前兆が少なく進行することも多いため、リスク因子を自覚して早めの受診につなげることが重要です。

編集部

ポリープの段階で発見して切除することで、がんの予防になると聞きましたが本当ですか?

笹島先生

大腸がんは、ほとんどがポリープ(腫瘍性の良性病変)から始まり、5年から10年かけて徐々にがん化していくとされています。そのため、がん化する前のポリープの段階で内視鏡検査により発見・切除することで、がんになるのを未然に防ぐことが可能です。特に10mm以上の大きなポリープは、早めに切除することが望ましく、これが、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は予防につながると言われる理由です。ただし、頻度は少ないながらも陥凹型がんといって、10mm以下でもがん化したり、がんから発生して進行が速いものもあります。早期発見は難しいのでそのような病変に対する経験が豊富な内視鏡医の下で大腸カメラ検査を受けるのが望ましいといえます。

何歳から受ければいい? 大腸カメラ受診のタイミング

何歳から受ければいい? 大腸カメラ受診のタイミング

編集部

大腸カメラ(大腸内視鏡)は、何歳くらいから受け始めるのが理想ですか?

笹島先生

従来は40歳からの受診が推奨されてきましたが、最近では大腸がんの若年化が進んでおり、健康意識の高い方は30歳を過ぎたら検査を受け始めたほうが良いと考えられます。実際に、30代はもちろん、20代でも腫瘍性ポリープが見つかる例が増えており、若いうちからの予防が重要です。大腸がんは、ポリープが発生してから5年から10年を要するとされており、前駆病変の段階で発見・対処できれば、身体的・経済的負担も大幅に軽減できます。

編集部

より早く大腸カメラを受けるべきという人はいますか?

笹島先生

30代からの大腸カメラ受診が推奨されます。たとえば、前述したように肥満、アルコール摂取が23g/日を越える方、加工肉や赤身肉を多く食べる方、亜硝酸ナトリウムなどを含む食品を日常的に摂っている方、喫煙習慣のある方は特に注意が必要です。さらに、血縁に大腸がんの既往の方がいる場合は、発症リスクが高いとされており、より早い段階での検査が望まれます。

編集部

大腸カメラは、どのくらいの頻度で受けることが理想ですか?

笹島先生

一般的には、ポリープがなかった場合であれば、便潜血検査を逐年で受けて頂くことを前提に、3~5年に1回程度の大腸カメラ受診が推奨されます。一方、ポリープが見つかり切除した場合や、前回の内視鏡で異常が認められた方は、医師の指示に従って1〜3年ごとの定期検査が望まれます。また、リスク因子の多い方は、検査のタイミングや頻度を医師と相談の上で決めると安心です。

配信元: Medical DOC

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