安倍晋三元首相を銃殺したとして、殺人罪などに問われた山上徹也被告人(45)に対して、奈良地裁(裁判長:田中伸一、裁判官:岡田卓、米田京花)は1月21日、無期懲役の判決を言い渡した。
刑の重さが主な争点となった。検察側が無期懲役を求刑したのに対し、弁護人は「重くても懲役20年にとどめるべき」と主張していた。
事実上の「終身刑」になりつつあると指摘される「無期懲役」を、裁判員裁判はなぜ選択したのか。弁護士ドットコムニュースは、入手した判決要旨をもとに、その判断の理由と背景を紹介する。
●殺人など5つの罪で起訴、主な争点は量刑
山上被告人が問われた罪名は、殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、武器等製造法違反、火薬類取締法違反、建造物損壊の計5つの罪に及ぶ。
被告人は起訴内容をおおむね認めており、公判では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者だった母親による高額献金などが、事件にどのように影響を与えたのかが大きな論点となった。ただし、主な争点は量刑だった。
今回の事件は、懲役刑と禁固刑を一本化する「拘禁刑」を新設した刑法改正より前に発生したため、山上被告人には拘禁刑ではなく、従来の懲役刑が適用された。また、奈良地裁は、未決勾留800日を刑期に算入すると判断した。
●争点とこれに対する判断
第1 争点
本件では、
手製3銃身パイプ銃が銃砲刀剣類所持等取締法における「拳銃」及び武器等製造法における「けん銃」にそれぞれ該当するか否か(争点①)、 ②手製5銃身パイプ銃1、手製パイプ銃、手製9銃身パイプ銃、手製5銃身パイプ銃2、手製4銃身パイプ銃、手製2銃身パイプ銃の各銃が銃刀法における「砲」及び武器等製造法における「小口径砲」に該当するか否か(争点②)
が争点となっている。

第2 判断 1 争点①について
(1) 定義等
銃刀法における「拳銃」及び武器等製造法における「けん銃」とは、「肩付けせず、片手で保持して照準を合わせ、金属性弾丸を発射することができるような装薬銃で、本来、人の殺傷を目的としているもの」を指すと解される(なお、このような定義については、当事者間においても特段争いがない)。
(2) 事実認定
ア 手製3銃身パイプ銃(以下「本件銃」という)の構造等は、全長が約32.3センチメートル、全幅が約8.5センチメートル、重量(バッテリー及び実包様のものを含む)が約1737.2グラム、銃身長が約20.1センチメートルから20.2センチメートル、銃身口径が約12.5ミリメートルから12.7ミリメートルである。
また、バッテリーが銃身の下に取り付けられ、銃把とバッテリーの間(台座の下付近)には、弾丸を発射するためのプッシュスイッチも取り付けられている。
なお、3本の銃身は、木製の台座の上に固定されており、バッテリーや銃把を除く本体部分は、耐久性のある黒色テープで何重にも巻かれて固定されている。
このような本件銃の所見、構造及びその実際の形状等に照らすと、本件銃は、肩付けすることは想定されておらず、一般的・平均的な体格の成人にあっては、片手で保持して照準を合わせ、発射操作することができると認められる。
なお、本件銃は、バッテリーが取り付けられた状態では、その重心が銃のやや前寄り(銃身寄り)にあるが、前記プッシュスイッチに指をかけることなどにより、本件銃をより安定して片手で保持し、発射の操作をすることが可能になると考えられる。
よって、本件銃は上記(1)の「肩付けせず、片手で保持して照準を合わせ」という要件を満たす。
イ 確かに、本件銃を両手で持つことにより、照準を合わせる際の正確性や発射の安定性がより高まり、あるいは、発射の反動がもたらす衝撃をより制御しやすくなるということは否定できない。
しかしながら、E証人の説明(第6回公判・同人の証人尋問調書)からも、発射の反動により照準を定めた方向から大きく逸れて弾が飛んでいくとはいえず、また、上記のように、本件銃の実際の形状等を踏まえると、発射する者がその反動による衝撃を意に介さないのであれば、片手での保持という簡易な動作により、かなりの確実性をもって、照準を合わせて発射することができるといえる。
このような性能は、まさに上記(1)の「肩付けせず、片手で保持して照準を合わせ」という「拳銃」あるいは「けん銃」の要件を満たすものと考えられるから、上記の認定は妨げられない。
ウ そして、E証人の証言内容及びその他の関係証拠によれば、本件銃が金属性弾丸を発射する機能を有し、その威力が人を殺傷するに足る程度のものであることは明らかに認められるため、「金属性弾丸を発射することができるような装薬銃で、本来、人の殺傷を目的としているもの」であることも認定できる。
よって、本件銃は、上記(1)の要件をいずれも満たすので、銃刀法における「拳銃」及び武器等製造法における「けん銃」にそれぞれ該当すると認められる。

2 争点②について
(1)銃刀法上の「砲」及び武器等製造法上の「砲」の関係性等について
銃刀法は、銃砲等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めるもので(同法1条)、また、武器等製造法は、公共の安全の確保等のために、銃砲を含む武器の製造、販売等を規制するものであり(同法1条)、これらの法律は、規制対象行為等を異にするものの、銃砲の有する危険性に着目して必要かつ適切な規制を実現することで公共の安全の確保等を図ろうとする点で、その趣旨・目的を共通としているといえる。
よって、これらの法律における「砲」の定義及び要素は同じであると解することが相当である(なお、このような結論の限度では、当事者間においても特段争いがない)。
(2)「砲」の意義等について
武器等製造法施行規則においては、武器等製造法における武器のうちの「銃砲」の一種として「砲」が挙げられた上、「砲」は、迫撃砲を除いては、口径の大小により分類がされ、口径の最も小さいものが「小口径砲」とされ、その意義は「口径が20ミリメートル以上40ミリメートル以下の銃砲」とされている(同法施行規則2条1項1号口)。
そして、前述した銃刀法と武器等製造法の趣旨・目的や、同法及び同法施行規則において、上記「砲」の形状等以外に必要とされる要素等が特段定められていないことなどに照らせば、銃刀法及び武器等製造法における「砲」とは、金属性弾丸を発射する機能を有する武器としての装薬銃砲(銃刀法2条1項)のうち、口径20ミリメートル以上のものとの要素を満たすことで足りると解すべきである。
(3)弁護人の主張について
弁護人は、「砲」の解釈として、銃砲のうち「口径20ミリメートル以上のもの」というだけではなく、直径20ミリメートル以上の口径弾(砲弾)を発射する構造を備え、それにより強大な破壊力を有するに至っていることも必要と解すべきである、銃刀法上、「砲」を含む「拳銃等」が厳重に処罰されているのはこれらの類型的危険性が高いためであり、「砲」にも固有の特性・危険性が必要であるなどと主張する。
確かに、銃刀法における「拳銃等」や武器等製造法における「銃砲」は、4つの類・型(砲、拳銃(けん銃)、機関銃、小銃)に区別され、それぞれの類型において、威力の強さや危険性を生じさせる形状等が要件となっている。
しかし、前述したように、武器等製造法及び同法施行規則は、「砲」の形状として、口径に関する規定を明示的に設けている一方で、それ以外の構造や威力に関する要件・要素は何ら規定していないのであって、あえて弁護人の主張するような要素を加重すべき根拠は見当たらない。
この点、E証人の説明によると、口径が大きくなれば、それに見合って発射できる火薬の量や弾丸が大きくなるなどし、威力が大きくなる(第6回公判・同人の証人尋問調書)ということであり、弁護人の主張を前提としても、「砲」は一定の大きさの口径を備えることによって、それに見合った強度な威力を有することが当然に想定されているものと考えられる。
また、直径20ミリメートル以上の砲弾を発射できないとしても、より小さい弾丸を複数発射することで高い威力を発揮する可能性もあり、危険性が低いということにはならない。
よって、銃砲の口径以外の構造や威力に関する要件・要素をいう弁護人の主張は、銃刀法などの趣旨・目的に合致せず、採用できない。
(4) 結論
4銃身時及び2銃身時の各手製銃の口径は、いずれも20ミリメートル以上であり、かつ、金属性弾丸を発射する機能を有し、それぞれその威力が人を殺傷するに足る程度であることは、当公判廷において取り調べられた証拠から明らかに認められる。
よって、以上の各手製銃は、いずれも銃刀法における「砲」及び武器等製造法における「小口径砲」(ただし、上記第1のとおり、手製4銃身パイプ銃では「小口径砲」該当性は問題になっていない)に該当する。

