「出張」と嘘をつく夫に、詩織は不倫の証拠ファイルを突きつける。言い逃れできない惨状に崩れ落ちる夫。多額の慰謝料と絶縁を勝ち取り、詩織は太陽と共に再出発。執念と友情で、自らの手で未来を掴み取った。
決戦の日はいい天気だった
決戦の日は、皮肉にも気持ちがいいほどの晴天でした。「出張に行ってくる」と軽やかな足取りで家を出ようとする裕也を、私はリビングに呼び止めました。
「裕也、出かける前にこれだけ見てくれる?」
私はテーブルの上に、1冊の分厚いファイルを置きました。
「なんだよ、忙しいんだってば……。え?」
ファイルを開いた瞬間、裕也の顔から血の気が引いていくのが分かりました。そこには、彼と舞花がホテルに入る写真、SNSのキャプチャ、そして車内での生々しい会話を書き起こしたテキストが並んでいました。
集めに集めた証拠を突きつける
「な、なんだよこれ……。お前、いつの間に……」
「あなたの不倫の証拠よ。私はずっと集めてたの。あなたが舞花さんとおそろいの指輪を買った時から」
裕也は震える手でページをめくりました。
「待てよ、これは違うんだよ、事情があって会ってただけで…」
「事情? 『離婚したいのにあいつがしぶとい』って言ってたのが事情? 舞花さんとホイホイ旅行に行くのが事情?」
私が冷静にレコーダーを再生すると、自分の声がリビングに響き渡り、裕也は震えだしました。
「あなたがさんざん希望していた離婚には応じます。でもね、あなたと舞花さんには相応の慰謝料を請求します。それから、太陽との面会交流は一切させない。あなたのような父親が息子に会う資格はないから」
「待てよ! 太陽に会えないなんて……!」
「どうぞ、私と離婚して大好きな元カノさんとお幸せに。あ、そうそう。彼女にも今日、内容証明を送っておいたの。不倫相手の家庭を壊そうとした代償、しっかり払ってもらわないとね」
裕也は崩れ落ちるようにソファに座り込みました。まさか大人しいと思っていた妻が、ここまで徹底的に準備をしていたとは夢にも思わなかったのでしょう。

