29歳の奈美恵は、モラハラ夫に苦しんでいた親友・真由の別居を喜ぶ。しかし真由は「支えてくれる人ができた」と不倫を告白。子どもを連れ回し、恋に溺れる豹変した親友の姿に、奈美恵は言いようのない不安を覚えて―――。
友人からの連絡は「彼」のこと
「ねえ、聞いてよ。昨日の夜、彼がね……」
スマホの画面に踊るのは、親友であり1児の母である真由(まゆ)からのLINE。以前のような、育児の愚痴や節約レシピの交換ではありません。画面越しに伝わってくるのは、恋に酔いしれている心情でした。
私の名前は奈美恵。29歳で、夫のアキラと平穏な2人暮らしをしています。真由とは学生時代からの仲で、お互いに家庭を持ってからも、何かあればすぐに連絡を取り合う一番の親友でした。 真由は昔から、穏やかで控えめな性格です。彼女は一足先に子どもを設けて育児に奮闘していることもあり、いろいろと話を聞く仲でした。
友人の夫はモラハラ
数年前、彼女が結婚した相手は、一見仕事のできるエリート風の男性でしたが、実態はひどいモラハラ夫でした。
「誰に食わせてもらってると思ってんだか、こいつ態度が大きくて困ってるんですよね」
「掃除のやり方もわからない嫁で、困ったもんなんですよね」
真由の家で集まったとき、真由の夫は真由をこき下ろすようなことばかり言っていました。そのたびに真由は肩をすくめ、「私が至らないから……」と力なく笑っていました。
私は彼女のことが心配で、ずっと「あの夫はおかしいよ、別れた方がいいと思う」と言い続けてきました。
だから、半年前に彼女から「単身赴任で別居することになりそう」と聞いたときは、心から安堵したんです。これでやっと彼女に平穏が訪れる。そう信じていました。

