「atelier saison」オープンの背景
「atelier saison」オープンの背景についても紹介しよう。
同店オーナーの五十嵐麻規さんは、18歳で単身ドイツへ渡り、エッセンの芸術大学でバイオリンを専攻。現地の楽団でインターンとして演奏活動を行った後、腰痛の悪化により音楽家としてのキャリアを断念した。
ドイツでは、音楽が特別なイベントではなく、人と人を自然につなぐ日常の一部として存在していた、と感じた五十嵐さんだが、帰国後、日本では演奏会の敷居が高く、若手や学生に機会が少ないと感じていたという。
2022年10月、ルイ・ヴィトンへの転職直後に、五十嵐さんの母が病気を発症。2023年末までと余命宣告を受けたが、2023年7月に旅立った。
母が生前より、“愛犬・ナッツの行く末”を何よりも案じていたことから、五十嵐さんは、仕事で家を空けがちな日々の中、ナッツが愛猫チカと2匹で留守番する姿に「このままでいいのだろうか」と自問し続けたという。
母の想いに自身の経験を重ね、カフェオープンを決意

五十嵐さんの母が遺した60年物のヤマハピアノ
そして、母がやりたかった『人が集うカフェ』に、自分の経験を重ねることを決意。「atelier saison」オープンのために、母が遺した60年物のヤマハピアノを職人の手でフルメンテナンスした。
屋号の「saison(セゾン)」は、母の名前「節子」に由来。ドイツ語・フランス語で“季節”を意味し、人生や時間の移ろいを大切にしたいという想いが込められているという。
2026年5月には、五十嵐さんのドイツの親友であるファッションデザイナーが来日し、POP-UPショップの開催も予定されている。
五十嵐さんは、ドイツ留学で体感した「音楽が特別なイベントではなく、日常の中で人をつなぐ風景になる」文化を背景に、音楽家・学生・地域の人が、特別な準備をしなくても集い、表現し、くつろげる“街のアトリエ”を目指しているとのこと。犬・猫同伴可(条件あり)の運営や、カフェ営業と小規模演奏・練習利用が共存する空間設計により、「また来たい」ではなく“戻ってきたい場所”としての定着を目標にしている。
