高齢の方にとって骨折は、単なるけがではなく、寝たきりにつながる重大な転機になることがあります。骨折後の安静による筋力低下や活動量の減少は、ADL(日常生活動作)の低下を招きやすいものです。
本記事では高齢の方の骨折は寝たきりの原因になるかについて以下の点を中心に紹介します。
高齢の方の骨折が寝たきりにつながりやすいのはなぜか
高齢の方の骨折を防ぐためにできること
高齢の方が骨折後に寝たきりにならないためのリハビリ方法
高齢の方の骨折は寝たきりの原因になるかについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
岡田 智彰(医師)
昭和大学医学部卒業。昭和大学医学整形外科学講座入局。救急外傷からプロアスリート診療まで研鑽を積む。2020年より現職。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定整形外科指導医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リハビリテーション医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
高齢の方と骨折の関係性

高齢の方が骨折しやすい理由を教えてください
高齢の方が骨折しやすいのは、加齢に伴う筋力や骨の変化が複合的に影響するためです。年齢とともに筋肉量が減少し、特に下肢の筋力やバランス機能が低下する“サルコペニア”が進行することにより転倒リスクが高まり、骨折につながりやすくなります。
また、骨密度が低下する“骨粗しょう症”も大きな要因です。骨粗しょう症は、加齢や閉経による女性ホルモンの減少のほか、カルシウムやビタミンD不足、運動不足により骨が脆くなるため、わずかな衝撃でも骨折が起こることがあります。
加えて、視力や聴力、認知機能の低下により障害物への反応が遅れ、転倒の危険が増します。さらに、皮下脂肪の減少で身体を守るクッションが薄くなることも衝撃を強める一因です。
一度骨折すると、歩行能力の低下や再転倒のリスクが高まり、要介護につながるケースも少なくありません。転倒予防のためには、筋力維持や住環境の工夫、定期的な骨密度検査が大切です。
高齢の方に多いとされている4つの骨折の種類を教えてください
高齢の方の骨折には、“四大骨折”と呼ばれる4つの代表的な部位があります。
・大腿骨近位部骨折
・脊椎圧迫骨折
・上腕骨近位部骨折
・橈骨(とうこつ)遠位端骨折
これらの骨折は、いずれも転倒が主な原因で発生します。筋力やバランス能力の低下、骨粗しょう症などが重なることでリスクが高まり、なかでも大腿骨近位部骨折では歩行困難から寝たきりにつながるケースも少なくありません。
骨折が寝たきりにつながりやすいのはなぜですか?
高齢の方が骨折をきっかけに寝たきりになる主な理由は、筋力と体力の急激な低下によるものです。
骨折後は安静が必要ですが、長期間ベッドで過ごすことで下肢の筋肉が衰え、立ち上がりや歩行が難しくなります。これにより、ADL(日常生活動作)が著しく低下し、食事や排泄などの基本動作も介助が必要な状態に陥ります。
関節の拘縮やバランス感覚の低下が進むと、再び転倒してさらに骨折する悪循環に陥ることもあります。前述したように、大腿骨近位部骨折では、早期に離床やリハビリを行わないと寝たきりに移行しやすく、退院後も自立歩行が困難になるケースが少なくありません。
リハビリの遅れを防ぐためには、早期のリハビリ開始と、医療・介護が連携したサポート体制が重要です。
高齢の方が寝たきりになるとどのようなリスクがありますか?
高齢の方が寝たきりになると、身体機能や精神機能の低下を引き起こす”廃用症候群”が進行します。長期間の安静により筋力が顕著に落ち、関節が硬くなって動作が制限され、歩行や立ち上がりが難しくなります。
また、血流や代謝の低下から褥瘡(床ずれ)や肺炎、便秘、低栄養などの症状を合併しやすくなります。
さらに、活動量の減少による気分の落ち込みや社会的孤立から、うつ症状や認知症の進行を招くこともあります。
治療後に歩行が可能になっても、新たな骨折への不安から外出を控える”閉じこもり”状態に陥るケースも少なくありません。こうした状態が続くと、要介護度が上がり、生命予後にも影響を及ぼすことがあります。
このように、高齢の方が骨折した場合、早期のリハビリと社会参加を維持する取り組みが重要です。
骨折を防ぐためにできること

転倒を防ぐための生活上の工夫を教えてください
高齢の方の骨折を防ぐには、転倒そのものを未然に防ぐことが何より大切です。
まず、自宅の環境を見直し、つまずきや滑りの原因を取り除きましょう。段差のある場所にはスロープを設置し、カーペットやコードなど足を引っかけやすい物は片付けます。床は滑りにくい素材に替え、浴室や階段には手すりを設けることで安全性を高められます。
視力の低下も転倒の一因となるため、定期的な眼科受診も欠かせません。足元の安定を保つために、サイズが合った靴や滑りにくい靴底のものを選ぶことも大切です。
また、日常的に軽い運動やバランス体操を取り入れ、下肢の筋力を維持することで転倒リスクを減らせます。住環境の工夫と身体機能の維持、どちらも意識することが安全な生活につながります。
骨を丈夫にする食事や運動のポイントはありますか?
骨を強く保つためには、食事と運動の両面からのケアが大切です。
まず、カルシウム、リン、マグネシウムなど、骨の主成分となる栄養素を十分に摂取しましょう。これらは牛乳やチーズ、豆腐、小魚、緑黄色野菜などに多く含まれます。
そして、カルシウムの吸収を助けるビタミンD(魚類や卵黄、日光浴で生成)や、骨にカルシウムを定着させるビタミンK(納豆やほうれん草)ビタミンK(納豆やほうれん草)も欠かせません。筋肉を維持するためには、肉や魚、卵、大豆製品などから適量のタンパク質を摂ることも重要です。
運動面では、ウォーキングや軽い筋力トレーニングやヨガなど、骨に適度な負荷をかける活動を継続することでが効果が期待できます。日光を浴びながらの散歩は、骨の強化とビタミンDの生成を同時に促すため特におすすめです。

