独学に励む日々
退学届を提出した日、Mは泣きませんでした。
「いつか必ず、この借金を返して、自分の力で技術者になる」
そう言ってMは地元の工場で働き始めました。
朝から晩まで、単純作業の繰り返し。
高専で学んでいた専門知識とは程遠い、肉体労働の仕事でした。
しかし、Mは諦めませんでした。
仕事が終わった後、帰宅してから深夜まで独学で勉強を続けました。
高専の教科書を手放さず、図書館で専門書を借りて情報を集めました。
休日には古いパソコンを分解して仕組みを学び、プログラミングの勉強も。
Mは静かにコツコツと努力を重ねていました。
そして数年後、Mは国家資格である「技能検定1級」を独学で取得したのです。
さらに、他にもいくつもの専門資格を次々と取得していきました。
その実績が認められ、ある大手メーカーの技術職に中途採用されることになりました。
「高専中退という経歴を見て、正直不安でした。しかし、あなたの独学での努力と取得した資格の数、そして実務経験を見て、我々はあなたを採用したいと思います」
面接官はそう言いました。
その言葉を聞いてMの目から、熱い涙がこぼれました。
輝やかしい未来
それから今、Mは大手メーカーの主任技術者として、重要なプロジェクトを任されるまでになりました。
年収も大幅に上がり、家の借金もすべて返済しました。
あの日、父親の経営失敗で夢を奪われた悔しさ。高専を辞めなければならなかった屈辱。
それでも、Mは諦めませんでした。
ただひたすらに、自分の力で道を切り開いたのです。
環境に恵まれなくても、諦めない心と努力があれば、人は必ず道を切り開けます。
Mの姿は、そのことを証明しています。
そして今。
Mは誰よりも輝いています。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。

