脱毛を始めたいと思っても、じつは、日焼けが原因で施術を断られることがあるのをご存知ですか? 安全に受けるための注意点を鎌倉かまりんヒフクリニックの福永先生に聞きしました。

監修医師:
福永 有希(鎌倉かまりんヒフクリニック)
浜松医科大学卒業。横浜市立大学附属病院皮膚科入局後、おもに神奈川県内の総合病院や皮膚科へ勤務。2018年、神奈川県鎌倉市に「鎌倉かまりんヒフクリニック」開院。皮膚の発信する「かまってちょうだい!」というアラートに耳を傾けるべく、日々の診療にあたっている。日本皮膚科学会皮膚科専門医。日本美容皮膚科学会、日本アレルギー学会、神奈川県皮膚科医会、日本痤瘡研究会の各会員。
日焼けが原因で脱毛が断られるのは本当?
編集部
日焼けしていると脱毛はできないって本当ですか?
福永先生
はい、本当です。レーザー脱毛や光脱毛をおこなっているクリニックやサロンでは、肌が日焼けしていると施術を断られる場合があります。日焼けで肌が炎症を起こしてメラニンが増えていると、毛のメラニンに合わせるはずの波長が肌のほうに反応してしまい、脱毛の効率が落ちたり、やけどのリスクが高まったりするからです。
編集部
軽い日焼けでもダメなのですか?
福永先生
軽度の日焼けであっても、肌の赤みやヒリつきがある状態では施術を見送られることがあります。また、日焼けした直後も要注意。このタイミングでは、まだ皮膚が黒く見えないかもしれませんが、内部ではメラニンが増えてしまっていることも多いのです。このように、見た目には問題がなくても、肌の内部がダメージを受けている可能性があるため、脱毛前の日焼けは十分気を付ける必要があります。
編集部
そうなると、夏に脱毛を始めるのは避けた方がいいのでしょうか?
福永先生
夏のレーザー・光脱毛がNGなわけではありません。しかし、日焼けのリスクが高まる季節なので一層、注意が必要になります。「日焼けをしているけれど、どうしても脱毛したい」という場合には波長帯を工夫するなどして対処することもありますが、肌トラブルや脱毛効率の観点からいえば、秋や冬から始める方がおすすめです。ただし脇の下のように日焼けをすることが少ない部位であれば夏でも脱毛することは可能です。
そもそも脱毛の仕組みとは?
編集部
脱毛は、どういう仕組みで毛がなくなるのですか?
福永先生
レーザー脱毛はメラニンに反応しやすい特定の波長を、光脱毛は広範囲の波長をもつフラッシュライト(IPL:intense pulsed light)を使用し、いずれも毛の黒い色素(メラニン)をターゲットとしています。毛のメラニンに反応する光を当てると、メラニンが光を吸収して熱に変わり、その熱で毛を作るおおもとの組織を破壊することで毛が生えにくくなる仕組みです。これにより、施術で反応したムダ毛は時間が経つと自然と抜け落ち、新しい毛は次第に生えにくくなっていきます。
編集部
脱毛の機械がメラニンをターゲットとするため、日焼けをしていると危険なのですね。
福永先生
はい、脱毛のレーザーや光は黒い色をしたメラニンという色素に反応します。ここで注意したいのが、日焼けした肌はメラニンの量が増えているということ。そのため本来は毛に集中するはずの熱が、毛の根本に届く前に肌に反応してしまい、やけどや炎症のリスクが高くなるのです。
編集部
敏感肌やアトピーでも脱毛できますか?
福永先生
肌の状態によります。敏感肌やアトピー肌でも、炎症や乾燥が落ち着いているときは施術可能な場合があります。ただし、炎症後に色素沈着を起こしている場合には、レーザーや光がそちらに反応してしまうリスクが高くなります。その場合には波長帯をコントロールしたり、照射する部位を細かく調整したりすることが必要です。医師の診察を受け、肌の状態をしっかり見極めてもらってから脱毛施術を受けるようにしましょう。
編集部
1回施術を受けただけで永久に生えてこなくなるのですか?
福永先生
残念ながら、1回では不十分です。毛には「成長期」「退行期」「休止期」という周期があり、脱毛の効果が出るのは成長期の毛だけ。1回の照射で反応するのは、一般に全体の2割程度と言われています。そのため毛のサイクルに合わせ、複数回の施術が必要となります。
編集部
何回くらいおこなえばよいのでしょうか?
福永先生
個人差はありますが、4〜8回程度の施術を繰り返すと満足のいく結果が得られるのではないかと思います。

