
2025年12月27日にサウジアラビアで開催されたリヤド・シーズンで、WBC王座とWBO王座は7度目、WBA王座とIBF王座は6度目となる防衛に成功した4団体統一世界スーパー・バンタム級王者・井上尚弥選手。9月のムロジョン・アフマダリエフ戦から3カ月という短いスパンの中、33戦無敗でまだ25歳のアラン・ピカソ選手を相手に、3-0の判定勝ちで王者の貫禄を示した。結果だけ見れば井上選手の横綱相撲だが、前人未到の境地を歩き続ける彼が背負うプレッシャーは計り知れない。そんな常人では想像できない状況の中で試合に臨む彼の内面に迫った番組が、Leminoで独占配信中の「密着ドキュメンタリー PRELUDE TO THE DREAM MATCH 井上尚弥vsアラン・ピカソ〜夢舞台への前奏曲〜」だ。(以下、ネタバレを含みます)
■井上尚弥選手の全盛期は“今”「一番強い時期なんじゃないかな」
同番組は、アフマダリエフ戦を終えてすぐに行った10月の強化合宿からサウジアラビア興行の試合直前までの井上選手に密着したスポーツドキュメンタリー。インタビューを通して試合への思いや今後目指す場所、試合に向けて醸成されていく心情などに迫っている。
10月8日、強化合宿の最終日。フィジカルを鍛え抜き、疲労が溜まり切った体に鞭を打ちながら練習に励む井上選手は「今回は(井上)拓真さん合宿だから。(拓真選手と那須川天心選手の)試合がなかったら、こんな時期にはやらない」と漏らしながらも、「コンディション的にも気持ち的にも維持したまま。休んでる間がないというか。そういうのが新鮮で、いろいろ発見しながら、この1年やってこられた」と、このクラスの選手としては異例となる年4試合の過密スケジュールを振り返った。
また、インタビューで「今が一番安定していますね。メンタル面、フィジカル面。そういったところを含めて、今が全盛期なのかなというのは思いますね。20代のときは『どこが全盛期だか分からない。自分がどこまで行けるか分からない』という感覚を持っていたんですけど、32歳になって今が一番強い時期なんじゃないかなと思いますね」と述懐。
その上で、ピカソ選手との一戦については「ピカソに対して、どんなボクシングを当てはめて、それを完成させなきゃいけないかというところ(が必要)。『前回完璧だったから今回も完璧だろう』という考えは全くない」と明かし、「好戦的なイメージ。めちゃくちゃうまいディフェンスとかじゃなくて、しっかりブロック使って、メキシカンっぽい独特なディフェンスを持っている選手。諦めない気持ちを持っている」と冷静に分析した。
■中谷潤人選手との“頂上決戦”についても言及
さらに「“圧倒的に勝つこと”。今回、それはちゃんと見せたいと思っているんですよ。前回のムロジョン戦というのは、ある意味“判定勝ちの素晴らしさ”、12ラウンド通したボクシングの美しさを見せたと思うので、次のピカソ戦というのは、冷静にボクシングの美しさを見せながら、時に残酷さ、荒々しさ、そういったものを全てミックスして勝ちたいと思っています」と意気込む。
ほか、2026年5月の開催がうわさされている中谷潤人選手との東京ドーム頂上決戦について言及。アフマダリエフ戦の試合後、リング上から会場内の中谷選手に対して「中谷くん! あと1勝。12月お互い頑張って、東京ドームで盛り上げましょう」と呼び掛けたことに触れ、「日本のボクシングファンからの声があったし、『中谷とやったらどうなんだ』『井上を止めるのは中谷じゃないか』という声も。でも自分の中では『ちょっと待ってくれよ。まだまだ早いよ』っていう気持ちはありましたから」と、“本懐”を語った。
ボクシングファンならずとも実現を期待するドリームマッチに向けた、まさにプレリュードとなるピカソ選手との戦い。絶対に落とせないばかりか、勝ち方にも注目が集まるプレッシャーのかかった試合に向けて爪を研ぎ続ける井上選手の姿、そして中谷選手をターゲットにした本音も飛び出すドキュメンタリーとなった。
◆文=原田健

