老人ホームの費用が高すぎて…。「世帯分離」で安くなるって本当ですか?

実家で一人暮らしをしていた83歳の母について相談させてください。

先日、母に軽い認知症の症状が見られ、今の家での生活が難しくなってきました。いくつか有料老人ホームを見学したのですが、月額費用が20万円を超えるところも多く、母の年金だけでは到底足りません。

私の貯金を切り崩す覚悟ですが、自分の老後も考えると不安で……。そんな時、友人から「世帯分離をすれば介護費用が安くなる」と聞きました。

でも、役所の手続きなんて難しそうですし、そもそも一緒に住んでいないのに世帯を分けるって、なんだかズルをしているみたいで後ろめたさもあります。本当のところ、どうなのでしょうか?
(佐藤さん・会社員・55歳)

お母様の将来とご自身の生活、その両方を天秤にかけて悩まれるのは、決して佐藤さんだけではありませんよ。

結論から言いましょう。「世帯分離」は、決してズルでも不正でもありません。 介護保険制度という枠組みの中で、法律に則って認められている「世帯のあり方」の選択です。これをうまく活用することで、月々の介護負担が数万円単位で変わることも珍しくない。

ただ、世の中「これさえやれば絶対にお得!」なんて甘い話はありません。世帯分離にも、メリットがあれば必ずデメリットもあります。佐藤さんのケースで本当に安くなるのか、それとも逆に損をしてしまうのか。

今日は、老人ホーム選びのプロとして、世帯分離の「光と影」を包み隠さずお話ししますね。

そもそも「世帯分離」って何?老人ホーム入居との関係

まず基本的なことから伺いたいのですが、世帯分離って、具体的にはどういう状態を指すのでしょうか?

世帯分離というのは、「同じ住所に住んでいながら、住民票上の世帯を2つ以上に分けること」を言います。

同じ家に住んでいるのに、世帯が別々。なんだか不思議な感じがしますね。

そうですよね。でも、住民票上の「世帯」の定義は「生計を共にしている集団」なんです。親子であっても、お財布が別々なら、本来は別世帯として登録できるんですよ。

老人ホーム入居時に世帯分離が行われる一般的なケース

  • 同居していた親が施設に入居する場合:物理的に住所が変わるため、必然的に世帯が分かれます。
  • 便宜上、同一世帯にしていた場合:親を自分の健康保険の扶養に入れていたり、手続きを簡略化するために世帯を一つにしていたケースです。

佐藤さんの場合、お母様は今は一人暮らし(単身世帯)ですよね? もし佐藤さんがお母様を引き取って同居してから施設に入れる…なんてことになれば話は別ですが、今現在はすでにお母様は「単身世帯」のはず。

ただ、もし過去に「税金の控除を受けるために住民票を一緒にしていた」なんてことがあれば、そこがポイントになります。

なるほど。私の場合は、母は実家の住所のままですが、私が時々お金を補助しているので「生計を共にしている」と言えるのかと思っていました。

お金の補助は「扶養」の話であって、住民票の「世帯」とはまた別の議論なんです。ここを混同するとややこしくなりますから、整理していきましょう。

なぜ安くなる?世帯分離による「3つの節約メリット」

友人は「世帯分離をすると介護費用がぐんと下がる」と言っていたのですが、なぜ世帯を分けるだけで安くなるんですか?

それは、日本の介護保険制度や福祉サービスの多くが「世帯の所得」を基準に費用を決めているからです。

つまり、現役世代の私と、年金暮らしの母が「同じ世帯」だと、私の収入が合算されて「課税世帯」扱いになり、補助が受けられないということですか?

その通りです。

佐藤さんのような現役バリバリの世代と一緒だと、お母様は「余裕がある世帯の人」と見なされてしまう。でも、世帯を分ければ、お母様は「所得の少ない高齢者単身世帯」として、手厚い補助の対象になる可能性が高まるわけです。

ちなみに以下の項目が、世帯分離によって費用負担が軽くなる項目です。

  1. 高額介護サービス費:1ヵ月に支払う介護サービス費の自己負担上限額が下がります。
  2. 特定入所者介護サービス費(補足給付):施設での「食費」と「居住費」が補助されます。
  3. 介護保険料:本人の住民税が非課税になれば、保険料そのものも安くなります。
配信元: 日刊介護新聞

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