●「それは虐待だよ」凍りついた心がほどけた瞬間
この体験を、手嶋さんは長年、誰にも打ち明けられずにいた。「もし母親の行為を肯定されたら、両親を信じられなくなる」。そんな恐怖から、父親にも話せなかった。
平成の時代、「ブルセラ」が社会現象になった。女子中高生が自ら制服や下着などを売り、法規制に至った経緯がある。自分がされたことを調べるうち、この言葉にたどりついた。
親に強要され「娘の上履き」として写真を撮られ、売られる。それは、子ども自身が売る以上に深く傷つく体験だった。
高校時代、初めて恋人に打ち明けたときは「冗談でしょ」と一蹴された。母親の行為が常識から外れたものだと、さらに落ち込んだ。
しかし、現在の交際相手は違った。話を最後まで聞いたうえで、こう言った。
「(手嶋さんの)お母さんがしたことは、ありえない。正直、僕は君のお母さんのことが嫌いになった」
身近な人が、母親の行為を「異常」だと認め、自分に代わって怒ってくれた。その瞬間、「貧しさのせい」と無理やり納得させていた霧が晴れた。
「私がされていたことは、虐待だったのかもしれない」
そう思えたことで、初めて自分を被害者として受け止めることができたという。
●プラットフォームに潜む「見えない加害」
それでも、すべての傷が癒されたわけではない。
「子どもに嫌な思いをさせたくないと強く感じ、自分が子どもを産んで育てるという未来が見えない」と語る。男性とのスキンシップにも、いまなお強い抵抗感がある。
フリマサイトやフリマアプリ、SNSでは、子どもの古着や靴を、子ども自身をモデルにして出品していると疑われるようなケースが指摘されている。
運営側は「青少年保護」を理由に、使用済みのスクール水着や学生服などの出品規制を強めている。
ただ、出品者が本当に親かどうかを見分けるのは困難だ。中には、性的利用を前提としているように見える出品も存在する。
手嶋さんもプラットフォーム側の対策強化を望む一方で、「使い古したものを売るなというのは難しいと思っています」と話す。

