スーパーで「激安」の豚肉を購入したら、実は値札の貼り間違いだった――。気づかずにレジを通過した買い物客は、罪に問われるのでしょうか。弁護士ドットコムニュース編集部に、そんな相談が寄せられました。
相談者が麻布十番の老舗高級スーパーに買い物に行った際、豚バラ肉が100グラムあたり103円で販売されていたそうです。「このスーパーは仕入先にこだわりがあり、通常、豚バラ肉は100グラムあたり400円以上で売られている商品が多い」と言います。「格安だ」と思った相談者は3パックを購入し、有人のレジで会計を済ませました。
ところが、帰宅して冷蔵庫に入れる際、商品名が「会津コシヒカリ」と表示されていることに気づいたそうです。お惣菜のおむすびや白米に付けられるはずだったラベルが、何らかのミスで豚バラ肉のパックに付けられてしまったと思われます。
相談者は店に申告することはせず、そのまま肉を料理に使ったそうですが、後になって「発覚したら罪に問われることになるのか」と不安に思っているようです。実際に犯罪になる可能性があるのか、簡単に解説します。
●明らかに貼り間違いだと「気づいていた」が、申告せずに会計を済ませた場合
まず、最初から明らかにラベルの貼り間違いに気づいていた場合から検討します。 つまり、この商品は「格安」なのではなく、別の商品のラベルと張り間違えているのだということに最初から気づいているのにあえてレジに行き、購入した場合です。
有人レジの場合とセルフレジの場合で結論は変わりうるのですが、本件のような有人レジの場合は詐欺罪(刑法246条1項、10年以下の拘禁刑)が成立する可能性があります。
詐欺罪の成立には「人を欺いて財物を交付させた」ことが必要です。
貼り間違いのある商品を、貼り間違いだと分かっているのに、正規のラベルがついているかのように装って店員に示すことは「人を欺く行為」にあたります。店員がラベルの貼り間違いに気づかずに会計処理をして商品を引き渡せば、「財物を交付させた」といえますから、詐欺罪が成立します。
もし店員がその場で貼り間違いに気づき、商品の交付がされなかった場合でも、詐欺未遂罪(刑法250条)が成立する可能性があります。
なお、未遂の場合の法定刑も基本的には既遂と同じですが、刑を軽くすることができ(43条本文)、量刑の上でも軽くなります。既遂の場合と比べると、実際の被害が出ていないためです。
●「気づかなかった」場合はどうなるのか
では、「豚肉に米のラベルが貼ってあることに気づかず、会計した」という場合はどうでしょうか。
結論からいえば、本当に気づかなかったのであれば、「故意」がないため、犯罪は成立しません。
詐欺罪の成立には、「人を欺いて財物を交付させる」という認識(故意)が必要です。本当に気づかなかったのであれば、こうした故意がないため、詐欺罪は成立しません。

