麻布十番の高級スーパーで190円の“激安豚肉”を購入→よく見たら…… ラベルミス気づかなくても客は罪になる?

麻布十番の高級スーパーで190円の“激安豚肉”を購入→よく見たら…… ラベルミス気づかなくても客は罪になる?

●「気づかなかった」という主張は通用するのか

ここで気になるのは、「本当に気づかなかったのか」「そのような主張が通るのか」という点です。

本当は最初からラベルを貼り間違えていると分かったのに商品を購入しようとしたのに、それが見つかってしまったからといって、言い訳として無理筋を通そうとする人もいるかもしれません。

豚肉のパックに米のラベルが貼ってあるという状況は、貼り間違いであることは明らかであり、パックの中身が米ではなく豚肉であることは一目瞭然でしょう。そうすると、貼り間違いに気づかないということはありえないようにも思えます。

しかし、「そんな主張はただの言い訳に過ぎない!」と決めつけるのはちょっと待ってください。

この相談者は、価格の表示を見て「格安だ」と思って購入し、家に帰ってから商品名が違うことに気づいたということです。

価格の表示は見ていて、商品名までは確認していない、というわけです。

買い物をするときに、ほとんどの人が「値段」はきちんとチェックするでしょう。私もなにかを買うときは、穴が空くほど値段をチェックします。

しかし、ラベルに記載された「商品名」を常に確認するでしょうか。豚肉のパックであれば豚肉であることは明らかですから、かえって「商品名」までいちいち見なかったということは考えられないでしょうか。

たしかに、さすがに1万円の商品が100円で販売されていれば、値付けが間違っているかもと考えてラベルを確認するかもしれません。

しかし、豚バラ肉で100g=100円(表示価格で190円)という価格は、普通のスーパーであれば安売りでありそうな価格です。いくら豚バラ肉が普段400円以上という相場観で売られている高級スーパーだということを前提にしても、商品名まできちんと確認せずに特売と勘違いし、家に帰ってから気づいたという話は、決して不合理ではなく、本当であるように思います。

今回のケースと同じ事案というわけではありませんが、弁護士ドットコムニュースが2025年10月に配信した記事では、発酵乳「R1」2本について、うっかり会計せずに店を出た男性が逮捕、起訴され、最終的に無罪を勝ち取ったケースを取り上げました。

本当に「気づかなかった」という場合もあり得ますし、その場合には、故意がないとして無罪になる可能性もあるのです。

●帰宅後に気づいて、そのまま料理に使った場合は?

では、今回の相談者のように、帰宅後にラベルの貼り間違いに気づいたにもかかわらず、店に返却せずにそのまま料理に使って食べてしまった場合、犯罪になるのでしょうか?

結論からいえば、犯罪にはならないと考えられます。

まず、このパック肉の所有権が誰にあるのかを考えてみます。

価格表示は間違っていましたが、相談者はレジで会計を済ませています。つまり、売買契約自体は成立しているといえます。

売買契約が成立すれば、原則として所有権は買主に移転します。価格の間違いは、民法上の「錯誤」(思い違い)の問題となります。

錯誤があった場合、店側は契約を取り消すことができますが(民法95条)、取り消されるまでは契約は有効であり、所有権は買主にあると考えられます。

そうすると、このパック肉は「他人の財物」ではなく、買主自身の物ということになります。自分の物を料理に使うことは、当然ながら犯罪にはなりません。 (占有離脱物横領罪なども、「他人の物」であることが前提です。)

ただし、民事上の義務については別途問題となり得ます。店側が錯誤取消しをした場合や、不当利得返還請求をした場合には、差額を支払う義務が生じると考えられます。

犯罪にならないとしても、気づいた段階で店に連絡すべきだったと思います。

たしかに、ラベルを貼り間違えたのは店の落ち度ですし、家に戻ってきてからわざわざ連絡する手間を客側が負担するというのも納得いかないとは思います。

しかし、相談者の側からしても、後になって不安を感じてしまっているわけです。

気づいた時点で店に連絡した方が、相談者としても数百円程度のことでモヤモヤせずにすんだ分、良かったのではないでしょうか。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

提供元

プロフィール画像

弁護士ドットコム

「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。