シーレの“影”が立ち上がる 音と光が切り替わって生まれるコントラスト
シーレのパートに入ると、空気がすっと冷えます。
人物像が現れる直前、音が細くなり、光が抑えられる。
クリムトの祝祭を浴びた後だからこそ、シーレの痩身の人物たちの不安定なラインが鋭く胸に刺さる。
会場のようす
音楽も、ウィーン世紀末の“影”を引き取るような旋律へ。ひらめく光、止まる影、遠くで響く低音。シーレ作品に漂う「生と死のはざま」の気配が、音と光によって輪郭を増していく。
会場のようす
面白いのは、クリムトとシーレを比較する展示ではないのに、音と映像の演出が二人の世界観の対比を身体に刻んでくる点。
クリムトの“外へ広がる光”、シーレの“内へ沈む影”。この切り替えが、会場全体を巨大な画集、あるいは劇場へと変貌させていきます。
体験を終えて外へ出ても、まだ金色が目の奥に残り、音が耳の奥で反響している。没入展示ならではの余韻が、しばらく身体に居座り続けるのです。
音に連れ去られる STUDIO PROGRAM「LISTEN. ONE MOMENT」
さらにもうひとつの柱が、STUDIO PROGRAM 「LISTEN. ONE MOMENT」。プロデューサーは山口智子さん。
10年にわたり世界各地の音楽文化を記録してきた「LISTEN.」の映像アーカイブから生まれた新シリーズです。
会場のようす
こちらは美術史の物語ではなく、土地の息づかいを“音で感じる”ための空間。
歌声、踊りのリズム、楽器の振動が映像と一緒に身体の中心へ届き、気がつけば“聴く”より“そこにいる”方へと意識が移っていく。
二つのプログラムは入口がまったく異なります。絵画好きはウィーンへ、音と旅好きはLISTEN.へ。同じ施設内で異なる没入体験が並んでいるのが、とても気持ちよい。
