前回のコラムでは、11月26日に厚生労働省が発表した「令和7年度介護事業経営概況調査」の結果について、介護事業経営者などから「実態と大きく乖離している」などの批判の声があがっていることを紹介しました。
今回に限らず、こうした声は厚労省が介護事業者の実態把握の調査を行うたびに聞かれます。
その原因はどこにあるのでしょうか。
・前回のコラム:24年の報酬改定 経営に影響なし? 「介護事業経営概況調査」結果に批判①

今回の調査は無作為抽出した全国1万7528ヵ所の事業所に対して実施し、8099施設・事業所から有効回答を得ました。
有効回答率は46.2%です。
どのような調査・アンケートでも有効回答率が100%になることはまずありません。
むしろ46.2%は高い方と言えるのではでしょうか。
重要になるのは、回答した46.2%が「介護事業所の中でも、どのような立ち位置なのか」という点です。
それによって介護事業者が現在置かれている状況を正しく反映していない調査結果が出る可能性もあるからです。
この調査で回答者が記入しなくてはならない項目は、事業所の年間収支(売上・利益)に始まり、職員数、職種ごとの賃金、稼働率、支出など多岐に渡ります。
収入についても「介護保険報酬」「総合事業報酬」「保険外収支」と細かく分けて記載しなくてはいけません。
そして調査票は事業所に送られてきますから、まず、これを目にして対応するのは施設長や管理者ということになります。
しかし、施設長や管理者クラスで、ここまでの細かい数値をしっかり把握している人がどれだけいるでしょうか。
デイサービスを21ヵ所運営するRARECREWの日下部竜太社長は、この点について自身のSNSの中で「調査票の中身について、管理者レベルではほぼ回答不可な内容です。私自身23年間介護事業に携わってきましたが、これらを理解している管理者に出会ったことがありません」とコメントしています。

もちろん、中にはそれらをしっかり把握している施設長・管理者もいるでしょう。
しかし、そこまで優秀であれば、日頃から様々な面で管理監督が行き届き、課題があっても理由の分析などもしっかり行えているでしょうから、経営状況は良好と思われます。
また、法人によっては、事業所に送られてきた調査票については本社・本部で一括して記入するところもあると思います。
この場合も、各事業所についてきちんと数値の管理を行えるだけの本社・本部機能がある法人は経営体制がしっかりしていると言えます。
人材採用や利用者の獲得などの面でも有利に働き、結果として好業績なケースが多いと思われます。
しかし、実際には、世の中の介護事業者の大半は中小・零細企業です。
「人手不足でケアマネジャーやサービス提供責任者なども現場に出ないと業務が回らない」というところも少なくありません。
こうした多忙を極める事業者の中には、過去の数字をいちいち調べ、調査票に正確に記入するだけの時間が無いというケースもあるでしょう。
その結果として、「回答をしない」だけならまだしも、「適当な数値を回答してしまっている」という可能性も否定できません。
つまり、回答をした半数の事業所は、介護事業所の中でも比較的経営状態が良好なところであることが考えられます。
そこの回答で介護業界全体の経営状況を判断して、次期介護報酬改定の根拠とするというのは少々無理があると言わざるをえません。
介護業界全体の状況を正確に把握するには「なるべく多くの事業所が正しく回答すること」が不可欠です。
そのためには業界団体などが「自分たちの状況を正しく知ってもらうためにも回答するように」事業所を指導することが大事です。
その一方で、国も調査方法や質問項目を見直して、回答の負担軽減を図ることも必要なのではないでしょうか。
介護の三ツ星コンシェルジュ


