2025年11月26日に開催された「第42回社会保障審議会介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」で2023年度・2024年度の介護事業者の経営状況が報告されました。
それによると、全介護保険サービスの平均収支状況(利益率)は2023年度・2024年度ともに4.7%で変化はありませんでした。
細かく見ていくと、看護小規模多機能型居宅介護(1.5ポイント増)、介護老人保健施設(1.2ポイント増)、特定施設入居者生活介護(0.8ポイント増)、小規模多機能型居宅介護事業所(0.8ポイント増)などは収支が好転しました。
特に介護老人保健施設は、2023年度は0.6%のマイナスと赤字だったのが黒字に好転しています。
その一方で、収支が悪化したサービスとしては訪問介護(1.5ポイント減)、訪問看護(1.6ポイント減)、通所介護(0.3ポイント減)などがあります。

また、2024年度の決算が赤字となった事業所の割合を見てみると、介護老人福祉施設や介護老人保健施設、通所リハビリテーション、短期入居生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護などは40%を超えています。
一方で、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、訪問リハビリテーション、特定施設入居者生活介護は赤字事業所の割合が20%台となっており、大きな差が見られます。
全体的には、施設系サービスの方が居宅系サービスに比べて赤字の事業者の割合が高くなっています。
ここで紹介したデータは2025年5月に行われた「介護事業経営概況調査」の結果に基づくものです。
この調査は、次期介護保険制度改正・介護報酬改定(2027年4月)に必要な基礎資料を得るために、介護報酬改定前後2年分の収支状況について、無作為抽出した全国の介護事業所を対象に実施します。
平たく言えば「2024年の報酬改定で皆さんの事業所の経営状況はどう変わりましたか教えて下さい。それによって次の改定の方向性を決めます」ということです。

さて、この調査結果を見て皆さんはどう感じたでしょうか?
「介護事業所の経営実態をきちんと把握しているなあ」と感じたでしょうか。
実は、今回に限らずこの調査の結果が発表されるたびに、介護事業経営者からは「実態と大きく乖離している」という疑問や批判の声が多くあがるのです。
例えば2024年の改定では、訪問介護の基本報酬が2~3%の引き下げとなりました。
これだけが原因ではないでしょうが、大手信用調査会社東京商工リサーチの調査では、報酬改定が行われた2024年以降、訪問介護事業者の倒産件数が急増しています。
具体的には2025年1月~6月の倒産数は45件。
同期間で比較すると2年連続で過去最高を更新しています。
これ以外にも、倒産に至らなくとも休業や廃業を余儀なくされている訪問介護事業所は少なくないと思われます。

しかし、厚生労働省が公表したデータからは、そうした苦しい状況は全くみえてきません。
2025年度の訪問介護の収支は前年度に比べて1.5ポイント下落しましたが、それでも9.6%のプラスとなっています。
これは全介護保険サービスの中でも4番目に高い数値です(※サンプル数が極端に少なく、参考になりにくい夜間対応型訪問介護を除く)。
また、赤字事業所の割合は35.1%で、全サービス平均の37.5%を下回っています。
少なくとも、このデータだけを見た場合「訪問介護は前回の報酬改定の影響で経営状況が著しく悪化している」という結論は導き出せないでしょう。
これを参考に次回の報酬改定を議論されたら、報酬のアップどころか更なる引き下げが行われる可能性も否定できません。
このように介護事業経営概況調査で「実態を正しく反映していない」と批判されるような結果が出てくる理由はどこにあるのでしょうか。
次のコラムでそのあたりを詳しく分析してみましょう。
介護の三ツ星コンシェルジュ
・2024年介護報酬改定で重視された「制度の安定性・持続可能性」


