
“夫”という生き物は、なぜ余計なひと言を言ってしまうのだろうか?「君は気にしなくていい」と言うのなら、いちいち言わなくていいのに…と妻は心でつぶやいていた。目の前の夫は「朝食で出している2人分のトーストとバター…そのバターをすべて自分のトーストに塗ってしまう男」だった。2人の夫婦関係は破綻寸前、いやもう破綻していたのかもしれない。10年前のあの日、4歳だった娘が行方不明になった日から――。本作『仮門(かりもん) 消えた少女―10年目の真実』を描いたのは、漫画家の鳩ヶ森(@hatogamori)さんである。2023年2月に「第2回 朝日ホラーコミック大賞」の漫画部門で大賞を受賞した新進気鋭の作家だ。鳩ヶ森さんに本作について話を伺ってみた。
■読者も一緒に推理する読者参加型の仕掛けで人気拡大



本作「仮門(かりもん) 消えた少女―10年目の真実」で、とりわけ読者の視線を集めたのが、第4話に登場する“夫”のワンシーンだ。何気ない日常の一場面でありながら、「怖いほどリアル」「身に覚えがある」とSNSでも大きな話題となった。
作者の鳩ヶ森さんによると、その着想の背景には、SNSでたびたび話題になる“食いつくし系夫”の存在があったという。「『家族4人分の餃子を焼いたら子どもの分も含めほとんどたいらげてしまった』『食いつくされないように冷蔵庫に鍵をかけたら破壊しようとした』など、にわかには信じられないエピソードがたくさん報告されていて、もはやこれは現代の妖怪譚なんじゃないか」と鳩ヶ森さんは感じていたそうだ。
ただし、本作に登場する夫は、典型的な食いつくし系ではない。鳩ヶ森さんは、あくまで「単に“気が利かない男”」だと語る。「妻も自分と同じようにお腹が空くし、食べる人間だという当たり前の前提が、すっぽり抜け落ちている」その感覚こそが、気が付かないタイプの男性の本質だという。
本作は2023年9月にSNS連載がスタートし、「犯人を予想する漫画」という読者参加型の仕掛けで人気を拡大。現在は電子書籍化も果たしている。最後に「ぜひ登場人物たちと一緒に犯人を推理してみてくださいね」と鳩ヶ森さんは読者へメッセージを残してくれた。日常の違和感が静かに恐怖へと変わっていく本作が気になった人は、ぜひ読んでほしい。
取材協力:鳩ヶ森(@hatogamori)
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