自宅で安心して医療を受けられる「訪問診療」。しかし、医療機関の選び方を誤ると「思っていた支援が受けられなかった」と後悔することも。訪問診療は、通院が困難になったときだけでなく、生活を支える医療として早期から検討されるケースも増えています。一方で、医師の専門性や緊急時の対応体制など、事前に確認すべき点を知らないまま始めてしまうと後悔につながることも少なくありません。信頼できるクリニックを見極めるためのポイントについて、たかみざわ医院の高見澤先生に詳しくお聞きしました。
※2025年11月取材。

監修医師:
高見澤 重彰(たかみざわ医院)
東京慈恵会医科大学 医学部卒業。東京慈恵会医科大学葛飾医療センターで初期研修を修了し、東京慈恵会医科大学泌尿器科学講座へ入局。東京慈恵会医科大学附属病院のほか、多くの関連病院で研鑽を積む。その後、川崎市多摩区内の医療・介護・保健・福祉グループで訪問診療に携わり、埼玉県立がんセンター 緩和ケア科に入職。令和6年度埼玉県立がんセンター主催 緩和ケア研修会では、ファシリテーターとして開催に携わる。2025年6月に「医療法人社団たかみざわ医院」の理事長・院長に就任。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医、日本緩和医療学会緩和医療認定医、PEG・在宅医療学会嚥下機能評価研修会修了、手術支援ロボットda vinci Xi Training As a First Assistant、難病指定医。
訪問診療とは何か? 自宅で受けられる医療とその限界
編集部
そもそも「訪問診療」とはどのような医療サービスなのでしょうか?
高見澤先生
訪問診療をおこなう医師は、一言でいえば「自宅に来てくれるかかりつけ医」ですね。体調の変化を日常の中で見守ります。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
高見澤先生
一般的に、訪問診療とは「通院が困難な患者さんのご自宅や施設に医師や看護師が定期的に訪問して診療をおこなうこと」をいいます。一般的には月2回程度の定期訪問で、体調のチェックや内服管理、血液検査などをおこないます。
編集部
急に体調が変わったときにもお願いできるのですか?
高見澤先生
はい。急な体調変化が起きた場合も、24時間対応体制が整っている医療機関であれば、夜間や休日でも往診を相談することが可能です。医療を「自宅で受けられる」ことが最大の特徴です。
編集部
訪問診療では、具体的にどんな検査や処置をしてもらえるのでしょうか?
高見澤先生
血液検査や尿検査、心電図、超音波(エコー)などの基本的な検査は訪問先でもおこなえます。また、点滴や酸素療法、胃ろうや尿カテーテルの管理、床ずれの治療なども可能なことが多いですね。さらに、慢性疾患(糖尿病・心不全・認知症など)の継続管理を通じて、入院を防ぐ役割も果たしています。そのほか、患者さんやご家族の希望に応じて緩和ケアや看取りもサポートします。
編集部
逆に、訪問診療では「できないこと」もあるのでしょうか?
高見澤先生
訪問診療では、CTやMRIなどの大型機器を使った精密検査、外科的手術、集中治療などはおこなえません。そのような検査や治療が必要な場合には、連携している病院へ紹介・搬送します。そのため「在宅でどこまで対応してもらえるか」を最初に確認しておくことが大切です。
後悔しないために知っておきたい、訪問診療の医療機関選びの「3つのポイント」
編集部
訪問診療を受けたいときには、まずどうしたらよいでしょうか?
高見澤先生
適切な医療機関を選択することが必要です。近年、特に都市部では訪問診療をおこなう医療機関が増えたこともあり、自分に適した医療機関を選ぶことの必要性がますます高まってきたと感じます。
編集部
まず何を基準に医療機関を選べばよいでしょうか?
高見澤先生
ポイントは3つあります。1つ目は「主治医の専門分野は何であるのか」。訪問診療の医師は、内科・外科など、それぞれ得意分野を持っています。どの科目の先生が主治医になるのかを確認しましょう。2つ目は「夜間・休日に誰が来るのか」ということです。場合によっては主治医ではなく、臨時の医師が来ることもありますし、診療所が緊急対応を外部の医療機関に任せていることもあります。体制をしっかり確認し、安心できる仕組みになっているか把握しておきましょう。3つ目は「将来起こりそうな困りごとを予想しておくこと」です。たとえば、食事が摂れなくなったときの対応や、痛みが強くなった場合の連絡先、介護との連携などを事前に話し合っておくと安心です。
編集部
いろいろなことに注意する必要がありますね。
高見澤先生
なかでも大切なのは、「これからどんな変化が起こる可能性があるのか」を主治医と話し合って備えておくことです。備えるときは、ご本人やご家族だけでなく、看護師さんやケアマネジャーさんなど、関わるみんなで連携しておくことが大切です。みんなが同じ方向を向いて支えることで、安心して日々を過ごすことができます。もしものときの準備を整えながら、今の生活を安心して続けていける。そんな環境を一緒に作っていくのが、訪問診療の理想だと思います。
編集部
医療機関によって、診療内容に違いはありますか?
高見澤先生
あります。一般的に、訪問診療をおこなう医療機関は内科系を中心にしているクリニックが多いですが、中には緩和ケアや精神科、在宅リハビリに力を入れている施設もあります。たとえばがんの在宅緩和を希望する方は、疼痛管理(痛みのコントロール)の経験が豊富な医療機関を選ぶと安心です。患者さんの病状や目的に合った専門性をもつ医療機関を選ぶようにしましょう。
編集部
費用面も気になります。保険は適用されますか?
高見澤先生
訪問診療は保険診療としておこなわれるため、基本的には健康保険や介護保険が適用されます。自己負担は1〜3割程度で、月に数千円〜1万円台が目安です。急性期病院や療養型病院への入院と比べると、在宅での医療費は比較的抑えられることが多いですね。ただし、夜間・休日の往診や処置内容によっては追加費用がかかる場合があります。契約前に「月額のおおよその目安」「追加費用の条件」を必ず確認しておくことをおすすめします。

