先輩が買ってくれた、おかしいくらい縁起のいい財布|私オム

先輩が買ってくれた、おかしいくらい縁起のいい財布|私オム

先日、とてもかっこいい財布をお世話になっている先輩に買ってもらった。

それは、とてもおかしな流れだった。

新年を迎えてはじめてその先輩と会う日。共に参加する新年会の前に時間があるなら洋服を買いに行こうと誘われ、私は意気揚々と先輩の家に向かった。洋服のブランドなどの知識に疎い私は、だいたい先輩から勧められた洋服を買う。その助言がないと、私は中学生が好きそうな洋服ばかり着た36歳になっていただろうと思う。

試着してサイズ感もその先輩に見てもらう。昔から私は試着が面倒で、かっこよく見えるサイズ感なんてわからず、いつもとりあえずLサイズかXLサイズを買っていた。ブランドによってLサイズの基準が違うなんてことはここ数年で知った。

なので、私はその先輩と一緒に行く買い物は、自分が年相応な出立ちでいるためと、自分のサイズに合った洋服を着るためにとても重要な時間だ。

 

いろんな店でたくさんの洋服を見て周り、年始になると何故か高まる物欲をふたりで発散させた。

途中で一軒の革製品やアクセサリーを売る店に入り先輩がアクセサリーを眺めている横で、私はとある財布と出会ってしまう。

大きさ、質、形、のどれもが自分が理想としていた財布だ。使っていた財布が傷みだしていたということもあり、私は半年前から新しい財布がほしかった。これは運命の出会いだ。

少し値段が高かったが、私はこれを手に入れると決意。しかし、私はすぐに店員さんに「これください」と言わなかった。いや、言えなかった。

「財布は目上の人からもらうのが縁起が良い」という話を聞いたことがあり、次の私の誕生日にはその先輩に「財布をください」とお願いしようと考えていたからだ。

実際、これまで使っていた財布もその先輩から誕生日プレゼントとしてもらったもので、その年からの自分は運気が上昇しているような感覚があった。

私は、財布は先輩に買ってもらうものだという主義の人間になっていたのだ。

(買ってもらった財布。使えば使うほどに味が出るらしい。楽しみ)

先輩に恵んでほしい主義の私は、店員さんを呼んで「これください」というのではなく、アクセサリーを眺める先輩を呼んで「これください」と言った。

当然、先輩は「え。なんで?」と返す。私は、次の誕生日に言おうと思っていたのだが、今出会ってしまったと説明した。値段が少し高いという問題の解決策も提示した。

私は、その先輩と別のもうひとりの先輩の3人で毎年誕生日プレゼントを渡し合っている。今年は、その別の先輩と2人で1つ、この運命の財布を私にプレゼントしてくれという提案だ。

先輩は笑って「おかしいね」といった。愉快という意味の「おかしい」ではなく、変だという意味だということぐらいは、私でもわかる。

補足しておくが、私の誕生日は5月である。

先輩の誕生日は2月で私はまだ今年の誕生日プレゼントを渡していない。いつも2月に入ってから渡す。たまに3月になって渡す年もある。

それなのに私は5月の誕生日プレゼントを1月によこせと言っている。まったく先輩がおっしゃる通りに私の言動は「おかしい」。

 

先輩は財布を買ってくれた。おかしいほどに優しい。

もうひとりの先輩にはまだ言っていない。

きっともうひとりの先輩は「おかしいね」なんて言い方をせずに「ふざけんな」というと思う。同じ5文字ではある。

配信元: 幻冬舎plus

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