ABCテレビが1月23日に放送した『探偵!ナイトスクープ』で、小学校6年生の長男が5人きょうだいの世話に追われる姿を描いたところ、放送後、SNS上では「ヤングケアラー状態」「親は何をしているのか」といった批判が巻き起こった。特に両親に対する強い非難が殺到する事態となった。
なかには、児童相談所に通報したことを報告する投稿もみられ、怒りや不安の感情が短時間で急速に広まったことがうかがえる。
同局は1月25日、TVerの配信を停止し、声明文を発表した。番組が投じた一石は大きく、「あえて意図した確信犯的に問題提起したのではないか」との声も聞かれる。
しかし、私はそうは思わない。放送までの舞台裏に何が起きていたのか、テレビ業界で働いてきた経験を踏まえて、考察してみたい。(テレビプロデューサー・鎮目博道)
●優れたバラエティはニュース番組に勝る
今回の『ナイトスクープ』の炎上について、テレビ業界の人間として「おそらくこういうことだったのではないか」という見立てを示しておきたい。
「優れたバラエティやドラマは、ニュース番組よりもニュースである」
実際、報道番組以上に、バラエティやドラマが社会に問題を投げかけることは、実感としても珍しくない。
今回の放送も、結果的に「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたちの置かれた状況の一端について、世間に突きつけたと言えるだろう。
そういう意味では、結果論として、ニュース番組以上に「報道的な役割」を果たしていたと言えるのではないか。
だからこそ、「ナイトスクープは確信犯として問題提起したのではないか」という見方が出てくるのも理解できる。
ただ、業界の内部を知る立場から言えば、制作陣や放送局側が今回のような激しい炎上まで想定していたとは考えにくい。おそらく「ヤングケアラーの実態を世に問う」という明確な問題意識もなかったのではないだろうか。
●「しんみりさせる人情系の回」として作られた?
私自身、この番組が昔から大好きだ。間違いなく、大阪で一、二を争う名番組であることは議論の余地はないだろう。一方で、東京ではなぜか視聴率が伸びず、地上波で見るのは難しい。それでもMXテレビやTVerなどで、今も時折視聴している。
「人情喜劇の街、大阪らしい番組」というと安っぽくなってしまうが、市井の人々の「お悩み」に「探偵役」の芸人たちが寄り添い、ときに腹を抱えて笑わせ、ときにしんみりと涙を誘う。「人生泣き笑い」を巧みに描く、よくできたバラエティ番組だ。
今回問題となった依頼は、制作側としては、どちらかというと「しんみりさせる人情系」の回として構成したのだろう。
探偵役の霜降り明星・せいやも、VTRの中では終始真剣な表情で、積極的に笑いを取りにいく場面はほとんどない。
現地のスタッフやせいや自身も、長男の置かれた状況を見て「大変そうだ」「可哀想だ」と感じたのだろう。だからこそ、「厳しい状況の中で、必死に頑張っている少年の姿を、きちんと伝えよう」という方向に舵を切ったように思える。

