年齢を重ねると、体の免疫力が徐々に低下し、皮膚のトラブルが起こりやすくなります。特に50代以降は「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」や「白癬(はくせん)」などの皮膚感染症にかかりやすくなるため注意が必要です。そこで今回は、LIKKAスキンクリニックの林瑠加院長に、原因や症状、日常生活で気を付けるポイントなどを詳しく伺いました。
教えてくれたのは…
監修/林瑠加先生(LIKKAスキンクリニック院長)
慶應義塾大学形成外科学教室に約10年間在籍し、一般形成外科、小児、再建分野を幅広く担当。2015年からは4年半、カンボジアに居住し現地での臨床にも従事した。帰国後は形成外科に加え皮膚科、美容皮膚科の経験を積み、2024年11月に品川区西五反田に「LIKKAスキンクリニック」を開業。患者の身近な悩みに対応すべく、保険・自由診療双方からのアプローチで診療をおこなっている。
帯状疱疹とは?

帯状疱疹とは、50代以降に急増する水ぼうそうのウイルスが原因の皮膚疾患です。一度水ぼうそうになると、治ったあともウイルスは体内に潜伏し続けます。健康なうちは問題ありませんが、加齢や疲労などで免疫力が低下すると、体内に潜んでいた水ぼうそうウイルスが再活性化し、帯状疱疹が発症します。そのため、体に不調が出やすい50代以降に帯状疱疹が急増するのです。
また、水ぼうそうは人に感染する病気ですが、帯状疱疹は自分の体の中にあるウイルスが原因で発症するため、自分以外の人へ感染することはありません。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹の代表的な症状は、痛みとかゆみです。症状は神経節に沿って生じるため、基本的には体の左右どちらかに発症します。
帯状疱疹は、経過とともに症状が変化していくのが特徴です。まず、初期症状として、ピリピリとした皮膚の痛みやかゆみ、違和感が出現します。その後、皮膚に赤い小さな発疹が見られるようになり、水ぶくれを形成。水ぶくれは膿が溜まったり、血液を含んで黒ずんだりすることもあります。1週間ほど経つと、水ぶくれや膿は破れ、かさぶたへと変化。発症から3~4週目には正常の皮膚状態へと戻ります。
このように、さまざまな症状をもたらす帯状疱疹ですが、中でも厄介なのが痛みです。その痛みは「焼けるような痛み」「針で刺すような痛み」と表現されるほど強く、日常生活に影響を及ぼすこともあります。
また、帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)という後遺症を生じれば、痛みやしびれが長期間にわたり続くことも。特に、免疫力が低下している人や基礎疾患がある人ほど後遺症が出やすく、患者さんにとっては大きな負担となります。
帯状疱疹の治療法
帯状疱疹の治療は、水ぼうそう・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬が中心です。痛みが強い場合には、ロキソニンなどの鎮痛剤や、神経の修復を促すビタミン剤を使うこともあります。
帯状疱疹の治療は、早ければ早いほど効果的です。特に抗ウイルス薬は、72時間以内に服用することでウイルスの活動をすみやかに抑制し、神経への負担を軽減できると考えられています。しかし「72時間を過ぎたら治療を始める意味はないか」というと、決してそうではありません。1週間以内であれば治療効果は十分に期待できます。早ければ早いほど治療効果は高まるので、「もしかして」と思ったら皮膚科を受診することが肝心です。
帯状疱疹を予防するには? 日常生活で気を付けたいポイント

中高年世代に注意が必要な帯状疱疹ですが、予防するにはどうすれば良いのでしょうか? ここでは、日常生活で気を付けたい4つのポイントを紹介します。
規則正しい生活を心がける
帯状疱疹の予防には、免疫力をできるだけ落とさない工夫が必要です。そのためには、食事や睡眠、運動など毎日の生活習慣を整えることが肝心。普段の生活を振り返りながら、以下のポイントを意識してみましょう。
<食事>
・タンパク質やビタミン類、亜鉛などの栄養素をとり入れる
・3食規則正しく摂取する
<睡眠>
・寝る前はスマートフォンの使用を極力控える
・ぬるめのお風呂につかる
<運動>
・30分~1時間程度、日常の中でこまめに体を動かす
例えば、ウォーキングやサイクリング、家事の合間にできる簡単なスクワットなど
疲れやストレスをためない
疲れやストレスがたまると、自律神経が乱れて免疫力が低下する原因になります。ストレスは目に見えないため、自分で気付かない内にため込むことも少なくありません。疲れやストレスをためないためには、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切。音楽を聴いたり意識的に休息を取ったりして、免疫力の低下を防ぎましょう。
アルコールを過剰に摂取しない
過度な飲酒は、免疫力を低下させます。飲酒によって血中アルコール濃度が高まると、免疫細胞の働きが阻害されたり、傷付いたりする可能性があります。飲酒がストレス解消になる人も中にはいると思いますが、適量を守ることが大切です。節度ある飲酒を心がけることが、免疫力の維持につながります。
50代以上はワクチン接種を検討
帯状疱疹を予防する方法として、ワクチンを接種するという選択肢もあります。特に50代以上は、発症や重症化を防ぐために、接種を検討するのがおすすめです。帯状疱疹の予防接種に使われるワクチンは「生ワクチン」と「不活性化ワクチン」の2種類があります。どちらも、帯状疱疹の発症や合併症の予防効果が認められており、1回の接種で10年程度効果が持続すると報告されています。
小さな違和感を見逃さない
帯状疱疹を重症化させないためには、小さな違和感を見逃さないことも重要です。帯状疱疹は、体の片側だけに痛みやかゆみが出るという特徴を持ちます。普段と違うかゆみや湿疹、衣類が擦れたときにピリピリとするような痛みがあれば、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。

