ゴームリー作品①《Angel of the North》──産業空間との境界
Angel of the North, Antony Gormley, Public domain, via Wikimedia Commons.
《Angel of the North》が問いかけているのは、産業空間と人間との関係です。1998年にゲーツヘッドに設置されたこの彫刻は、高さ20メートル、翼幅54メートルという圧倒的なスケールを持ち、世界最大級の天使像として知られています。総重量は、なんと208トン!
この作品が立つ場所は、かつて炭鉱の浴場があった土地でした。地下深くで200年以上にわたり働いてきた労働者たちの歴史が、この場所には刻まれています。
ゴームリーは天使という形を選んだ理由として、以下の3つを挙げています。
・炭鉱労働者への追悼
・産業時代から情報時代への移行
・人々の希望と不安の象徴
この天使は宗教的な存在というよりも、想像の余地を持つ象徴として構想されています。翼は水平ではなく、3.5度前方に傾けられており、訪れる人を包み込むような感覚を生み出します。このわずかな角度によって、彫刻は静的な記念碑ではなく、周囲と関係を結ぶ存在となっています。
設置当初は費用や安全面をめぐって批判もありましたが、現在では地域の象徴として広く受け入れられています。年間数千万人の目に触れ、経済的・文化的な影響ももたらしました。この作品は、過去と未来、個人と集団をつなぐ場として機能しているのです。
ゴームリー作品②《Another Place》──自然との境界で試される存在
Another Place, Antony Gormley, Public domain, via Wikimedia Commons.
《Another Place》では、ゴームリーの関心は自然環境へと向かいます。クロスビー・ビーチに設置された100体の鉄製彫刻は、すべて海を見つめ、潮の満ち引きによって姿を現したり消えたりします。この変化そのものが、作品の一部です。
像が水没する様子は、人間の存在が自然の前ではいかに脆いかを示します。しかし、再び姿を現すとき、その変わらぬ形は持続する存在の強さを感じさせます。ゴームリーは、この作品を「人間の生が惑星の時間にさらされている状態」と表現しています。
また、この作品には移動や移民といったテーマも重ねられています。故郷を離れる不安と、新しい場所への希望。海を見つめる像は、観る者それぞれの内面的な旅を静かに映し出します。地元住民に親しまれ、生活の一部として受け入れられている点も、この作品の重要な側面です。
