「おじさんは仲間だから、僕が守るんだ」
「その後も蓮は、ワサビの小袋がたくさん入ったケースを見つめながら小声で『おじさんは、ワサビが苦手で仲間だから……僕が守るんだ』と独り言を呟いていて。きっと蓮の頭の中では自分が主人公で寿司とおじさんが出てくる壮大なストーリーが繰り広げられているんだろうな、と愛おしく思いましたね」
そして店員さんはすれ違いざまににっこり微笑み、蓮くんにちょっとしたお寿司のキーホルダーをサービスしてくれました。それを誇らしげに受け取ると「ありがとう! 僕がすしの平和を守るから」と元気に答えたといいます。「そしたら店員さんは『ふふ、じゃあ悪さをするネタを見かけたら僕たちに報告してね』と優しく返してくれて。本当にほっこりした気持ちになりました」
忘れられない冒険のような時間
怒鳴り声をあげていた例の男性は、帰り際、照れくさそうに蓮くんに手を振ってきたそう。蓮くんもそれに全力で応え「ワサビに負けないように頑張ろ!」と手を振り返しました。
「その帰り道、蓮が得意げに『ママ、ぼく“すしポリス”だからね!』なんて言うので、思わず吹き出してしまいました。そういう設定で『すしの平和を守る』と宣言していたのかと。でもたしかに、その日の活躍っぷりはすしポリスと言っても過言じゃないかもと、妙に納得してしまいましたね」
家に帰ると蓮くんは、店員さんからもらった寿司のキーホルダーを胸ポケットに付け、『今日の任務、完了! すしポリスの証だよ!』と得意げに報告してきたそう。
「そんな蓮を見て、小さな勇気と優しさ、そしてちょっとしたご褒美が、心を温かくしてくれるんだなと改めて実感してしまいました。たった一度の外食が、私たちにとって忘れられない冒険のような時間になったんですよ」と微笑む沙織さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

