若手医師への技術継承と教育体制
編集部
若手外科医や一般臨床医へのメッセージをお願いします。
中尾先生
革新的な手術法がどれほど優れていても、それを実施できる医師が限定されていては、患者さんの利益は限定的です。そこで、教育体制の充実に力を入れています。術前の画像診断の段階から、上腸間膜動脈、腹腔動脈、門脈の枝まで詳細に描出する3D画像再構成を実施しています。熟練技師が40分程度で、複雑な血管走行を正確に把握できるようになりました。ビデオレビュー、シミュレーション、実地見学を組み合わせた教育プログラムを確立しています。年間100~150例の臨床手術を通じて、若手医師が着実に学べる環境を整備しました。技術継承こそが、患者さんの治療機会を広げる最も重要な責務だと考えています。
77歳で現役を続ける理由
編集部
50年の経験を積み重ねた現在も、なお第一線で活躍されている理由をお聞かせください。
中尾先生
リビングレジェンドと称されることもありますが、今なお第一線で活躍しています。週3回、年間100例の手術を継続しており、月・水・金曜日に手術を実施し、火曜日と木曜日にセカンドオピニオン外来をおこなうというスケジュールです。学び続け、患者さんの命に向き合い続ける限り、医師として活動を続けたいという思いです。50年の経験があるからこそ、難しい症例に対応できる。その責任を感じています。コロナ禍においても、動線を工夫しながら診療を継続してきました。地域の患者さんだけでなく、全国から訪れる患者さんたちのために、現役医師として歩み続けることが私の使命だと思っています。
編集部まとめ
膵臓がんは進行した状態で発見されることが多く、治療成績も他のがん種と比べて非常に不良です。しかし、この医師が50年にわたって開発してきた門脈カテーテルバイパス法とメセンテリックアプローチは、そうした状況に大きな変化をもたらしました。科学的エビデンスに裏打ちされた革新的な手術法と、患者さんの命に丁寧に向き合うという医師としての基本姿勢。この両者が融合することで、初めて患者さんに真の希望が生まれるのではないでしょうか。
若手医師や一般臨床医にとっても、技術革新だけでなく、患者さんの治療機会を最大化するための努力を惜しまない姿勢は、大きな学びになるはずです。高齢化が進む社会において、膵臓がんを含む難治性がんの治療体制をいかに構築するか。その答えの一つが、ここにあるのかもしれません。
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