「麻疹(はしか)」の症状・原因はご存知ですか?【医師監修】

「麻疹(はしか)」の症状・原因はご存知ですか?【医師監修】

はしかは幼少期に誰でもかかる病気というイメージがありますが、1,000人に1人の割合で亡くなるといわれている注意すべき病気でもあります。

大人でも感染する可能性があり、子どもだけが感染する病気ではありません。

また、感染力が非常に強い感染症であることも、はしかの注意点です。

合併症のリスクが決して少なくはないはしかを正しく恐れるには、まずはどんな病気なのか知ることが大切です。

はしかの特徴や症状、感染した場合の対処法などについて詳しく解説いたします。

※この記事はメディカルドックにて『「麻疹(はしか)」とは?症状・原因についても詳しく解説?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

武井 智昭

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

はしかとは?

麻疹

はしかはどんな病気ですか?

はしかは、麻疹ウイルスによって起きる感染症です。そのため、麻疹ともいいます。高熱・全身の発疹がおもな症状です。

麻疹の初期症状は、せき・鼻水・目の充血であり、普通の風邪と判断が難しいです。発熱が3日程度してから、発疹が出現します。麻疹は感染力が強いことが特徴です。麻疹ウイルスの免疫を持っていない人が感染すると効果確率で発症します。

麻疹は、これまでは小児に多い感染症でしたが、MRワクチンの2回接種により小児例は日本では減少しました。しかし、症状の程度は軽いものの免疫力低下による成人発症例がみられております。

はしかはどのように感染するのですか?

はしかの原因となる麻疹ウイルスは、人から人へ感染します。感染経路は、飛沫感染・接触感染・空気感染の3つです。

麻疹ウイルスは、軽く長時間空気中に浮遊するため、感染者と離れていても空調を共有していれば感染する恐れがあります。空気感染するウイルスであるため、手洗いやマスクの着用を徹底しても感染する可能性があるのです。

また、感染力を表す指標である基本再生産数では、インフルエンザの1.3~1.8人に対し、はしかは12~18人です。基本再生産数からみても、はしかの感染力の高さがわかります。

免疫がないと確実に感染すると聞いたのですが…

免疫がない場合でも、麻疹ウイルスの感染者と接触する機会がなければ、感染することはありません。しかし、免疫を持たない人が麻疹ウイルスに感染した場合、ほぼ100%発症するといわれています。

はしかは、感染力が強く空気感染する病気です。そのため、現実的に考えると免疫を持たない人が一生感染しない可能性はゼロに近いでしょう。

日本では免疫獲得のために、2回の予防接種が推奨されています。

はしかにはどんな症状がみられますか?

感染すると、7~10日前後の潜伏期間を経て、発熱や咳などの症状が表れます。発熱や咳などの風邪のような症状が表れてから2〜3日後には、38℃以上の高熱・発疹・目の充血などがみられます。発疹がみえ始めてから3〜4日後には解熱することがほとんどです。全身にみられる発疹は次第に黒ずんだ色素沈着として残り、完全に治るまでは時間を要します。

修飾麻疹の場合は、潜伏期が10日以上と長い・熱が出ない・発疹が全身に広がらない・発疹が手足のみなど、通常の症状とは異なります。修飾麻疹は、免疫がありつつも不十分な人が麻疹ウイルスに感染した場合に発症するはしかの軽症のことです。症状は軽いですが、感染力はあるため修飾麻疹も注意する必要があります。

合併症を発症する可能性は?

重症化すると、肺炎・中耳炎・心筋炎・脳炎などの合併症を引き起こすこともあります。合併症の発症率は、麻疹患者全体の約30%で、決して低い数値ではありません。

おもな合併症は肺炎で、合併症全体の約半数を占めています。また、1,000人に1人の割合で脳炎、10万人に1人の割合で亜急性硬化性全脳炎(SSPE)が発症するともいわれています。学力低下や記憶力低下などがみられる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は非常に稀な合併症ですが、発症してから10年程度で学習能力低下から始まり、ゆっくりと進行する中枢神経の合併症であり治療法が確立されず、予後は不良とされております。

潜伏期間は5~10年と長く、治療法が確立されていない病気でもあります。はしかは、先進国でも1,000人に1人の割合で死亡する病気です。必ずしも合併症を発症するわけではありませんが、感染した場合は体調の変化に注意する必要があります。

編集部まとめ

注射する医師
はしかは、ワクチン接種率の上昇で感染者が少なくなっている病気です。しかし、日本に限らず世界中で感染する危険性があります。

日本ははしかの排除状態に認定されています。

それでもワクチンを摂取していない・1回のワクチン接種のみで充分な免疫が獲得できていない場合、感染する可能性はゼロではありません。

はしかの最も有効な予防方法はワクチンです。

免疫が不十分な方・海外渡航を控えている方・今後妊娠の可能性がある方は、麻疹ワクチン接種を積極的に検討しましょう。

参考文献

麻しんについて|厚生労働省

配信元: Medical DOC

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