認知症の進行によって現れる症状

進行に伴って起こりやすい症状を、生活の困りごとと結びつけて解説します。
記憶障害
初期は新しい出来事を覚えにくい形が目立ちますが、進行すると、約束や予定を守ることが難しくなり、日常生活の支援が必要になる場合があります。例えば下記のような状況です。
服薬を忘れて症状が悪化する
支払いを済ませたかどうかわからず不安が強まる
同じ買い物を繰り返して家計に影響が出るなど
こういった困りごとは、家族が繰り返し注意しても改善しにくい場合があるため、本人の努力に頼らず、暮らしの仕組みを整える方向で考えると負担が減ります。服薬はわかりやすいケースやカレンダーで管理し、支払いは自動引き落としにするなど、失敗しにくい形に変えていくとよいでしょう。仕組みで支えることが、記憶障害への実践的な対応になります。
見当識障害
見当識障害は、今がいつか、ここがどこか、目の前の方が誰かといった理解が難しくなる状態です。時間の見当がつかないことから始まり、場所や人物へと広がる場合があります。外出先で自宅がわからなくなると、ご本人は強い不安に陥りやすく、疲労や脱水が重なって体調を崩すこともあります。
家族は、外出の安全を確保し、連絡方法を整えると同時に、ご本人が落ち着ける声かけや環境づくりを意識することが大切です。予定変更がある場合は直前の説明だけでは混乱しやすいことがあるため、早めに伝え、紙に書いて一緒に確認するなどの工夫が役立ちます。
理解力や判断力の障害
理解力や判断力が低下すると、状況に応じて考えて選ぶことが難しくなり、金銭管理や契約、手続きの場面でトラブルが起こりやすくなります。代表的なトラブルがこちらです。
電話勧誘をうまく断れない
必要のない契約に同意してしまう
支払いを重複してしまう
ご本人の尊厳を守りながら、危険がある場面を減らす仕組みを整える必要があります。
実行機能障害
実行機能障害は、段取りを立てて行動し、複数の手順を順序立てて進めることが難しくなる症状です。料理や掃除、役所の手続きなど、工程が多い作業で失敗が増える場合があります。ご本人は頭の中で手順を組み立てにくくなっているため、急かされると混乱が強まることがあります。家庭では、作業を細かく分け、見える形にして一緒に確認する、難しい手続きは家族が代わるなど、負担を調整するとよいでしょう。
感情表現の変化
認知症では、妄想、幻覚、徘徊、興奮、暴言、睡眠の乱れなどの行動や心理の症状がみられる場合があります。背景には、不安や混乱、環境の刺激、体調不良などが重なることも多く、症状だけを切り取って評価すると対応が難しくなります。家庭でできる基本は、刺激を減らし、生活リズムを整え、安心できる関わりを増やすことです。危険がある場合は安全確保を最優先し、医療機関や介護の専門職に相談して支援体制を整える必要があります。家族だけで抱え込むと疲弊しやすいため、早い段階から助けを求めることが大切です。
介護につながる身体的な衰え

認知症だけでなく、筋力や移動機能の低下が介護につながる流れを解説します。
サルコペニア
サルコペニアは、高齢期に起こりやすい筋肉量と筋力の低下で、歩行速度の低下や立ち上がりのつらさなどとして表れる場合があります。筋力が落ちると転倒しやすくなり、外出が減って活動量がさらに落ちるという悪循環に入りやすくなります。認知症の有無に関わらず、サルコペニアが進むと生活の自立が難しくなり、介護が必要になる要因になります。予防の基本は、栄養と運動の両方を整えることです。たんぱく質を含むバランスのよい食事を意識し、無理のない筋力づくりを生活のなかに取り入れるとよいでしょう。持病がある方や痛みがある方は、主治医に相談しながら進めるようにしましょう。
ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドロームは、骨、関節、筋肉など運動器の機能が低下し、移動する力が落ちた状態です。痛みや関節の変形、骨粗しょう症、筋力低下などが重なり、歩くことや立ち座りが難しくなる場合があります。移動が不安になると外出を避けやすくなり、社会参加が減って気持ちの落ち込みにつながる場合もあります。ロコモティブシンドロームは進行すると自立した生活が難しくなる心配があるため、早めに気付いて対応することが大切です。家庭では、歩く距離が短くなっていないか、階段を避けることが増えていないかなど、日常の行動の変化を手がかりにするとよいでしょう。

