
20代女性の部屋とは思えない汚部屋の真ん中。そこに仰向けで寝転がり、「もうがんばれない」とつぶやくヒロイン・甘藤しおり。少女漫画の枠を超えたあられもない姿から、この物語は幕を開ける。
■結婚目前の裏切りと借金。汚部屋で自分をほめる孤独な夜



しおりが絶望の淵に立たされた原因は、信じていた彼氏の裏切りだ。交際半年で結婚の約束まで交わした相手だったが、彼にはお約束のように多額の借金があった。しおりは昼の会社勤めに加え、夜のバイトまでして借金返済に奔走した。しかし、その結果、彼は金を持って消えてしまったのである。
全く救いがないように見える状況のなか、なんとか食事を摂り、シャワーを浴びる。そんな必要最低限の生活を送る自分を「めっちゃエラいじゃん」とほめる姿は、最も切実な生存本能の現れと言えるだろう。
「ゲームのログみたいに、毎日生きているだけでご褒美ほしい」と願うほど疲弊した彼女に、ある出会いが訪れたとき、物語は動き出す。
■「黒い気持ち」を肯定する理由。作者が込めた「どうにかなれ」の願い
本作『がんばれしおりちゃん』を描いたのは、小学館の新人コミック大賞で佳作を受賞した実力派の杏乃(@sakana32929)さん。読者からの「気持ちがすごくわかる」「感情がリアル」という声に対し、杏乃さんは次のように語る。
「とてもうれしいです! 少女漫画はキラキラしたイメージが強いですが、黒い気持ちを抱えているヒロインでもよいのではと思って描いたので、受け入れてもらえたことがうれしいです」
タイトルに込めた意味についても、作者自身の切実な想いがあった。「頑張れない状態からどう頑張っていくのか、作者である自分も手探りの中で始まったストーリーなので、『どうにかなれ』という願いを込めて名付けました」
不幸のドン底に突き落とされたしおりの運命がどうなっていくのか。読者も「がんばれ」としおりを応援せずにはいられない、おもしろいくらいリアルな再生のすべてをぜひ見届けてほしい。
取材協力:杏乃(@sakana32929)
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