前回のコラムでも解説したように、国は住宅型有料老人ホーム入居者のケアプラン作成に自己負担を設ける意向を固めました。
ケアプランに自己負担を設ける理由については前回説明しましたが、「なぜ、住宅型有料老人ホームなのか」という点を疑問に思った方も多いと思います。
今回は、あくまでも私の個人的な推察ですが、その理由を探ってみたいと思います。
・前回コラム:24年の報酬改定 経営に影響なし? 「介護事業経営概況調査」結果に批判①

今回の報道を受けてある元介護事業経営者はSNSで「こうしたダブルスタンダードは制度の複雑化を招いて、利用者も介護事業者も自治体も混迷を極める」と批判的なコメントをしています。
確かにそうした点は否めません。
ただし、国としてもいきなり全ての介護保険サービスに導入するのではなく、一部に先行導入して、これまでの議論の中で指摘されてきた「介護保険サービスの利用控え」や「ケアマネジャーの公平性・中立性の崩壊」がどこまで起こるのかを把握しておきたい、という考えがあると思われます。
そうした理由から一部サービスで先行導入をするとしても、なぜ住宅型有料老人ホームなのでしょうか?
まず考えられるのは「利用者の資産状況を考慮した」という点です。
ケアプラン作成に自己負担が設けられれば、要介護度や利用する介護保険サービスの種類に関係なく全て同じ負担額になります(1割負担・2割負担などの違いはあるでしょうが)。
つまり、年金額などの所得額・貯蓄額が少ない高齢者ほど経済的に大きな影響を受けることになります。
住宅型有料老人ホームをはじめとする高齢者住宅は、それまでの自宅で生活をするのに比べて家賃や食費、管理費など利用者が負担する金額が増加することがほとんどです。
このため、一般的には「高齢者住宅に入居する人はある程度の収入・資産がある」と認識されています。
仮に自己負担が設けられても直ちに生活面で大きな影響は出ることはないだろう、と予想されます。

また、同じ高齢者住宅でも特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームではホームのケアマネジャーがケアプランを作成します。
それに対して、住宅型有料老人ホームでは「入居前から利用していたケアマネジャーを継続して利用するかどうか」「ホームに併設されている訪問介護事業所やデイサービスを利用するかどうか」などケアマネジャーや介護保険サービスの利用について入居者側に多様な選択肢があります(少なくともルール上はそうです)。
したがって、自己負担の導入によって「利用者とケアマネジャーの関係性に何か変化が生じたか」「作成されるケアプランの内容にどのような変化が見られたか」などの変化を比較・検証しやすい、という点があります。
こうした点から、住宅型有料老人ホームが自己負担導入の対象として選ばれたと推察できます。
しかし、もっとうがった見方もできるのではないでしょうか。
近年介護業界を騒がしてきた大きな問題として、いわゆる「ホスピス住宅」「ナーシングホーム」と呼ばれる高齢者住宅の不正請求があります。
こうした高齢者住宅は住宅型有料老人ホームのように介護サービスが外付け型のものがほとんどです。
また、サービス外付け型の高齢者住宅の場合には、以前から「囲い込み」や「過剰介護」などの問題点も指摘されてきました。
ケアプラン作成に自己負担が導入されれば、国や自治体が「その影響を検証したい」という名目で個々のケアプランのチェックをしやすくなります。
その結果として、不適切なケアプランを減少させることができるかもしれません。
こうした観点から、今回は住宅型有料老人ホームが対象になったのではないか、と見ています。
あくまでも個人的な推察ですが…
介護の三ツ星コンシェルジュ


