宇佐卓真と平野宏周の繊細な演技が導く「焦点と色」の映像体験、何度見直しても発見があるドラマ「被写界深度」の深さ

宇佐卓真と平野宏周の繊細な演技が導く「焦点と色」の映像体験、何度見直しても発見があるドラマ「被写界深度」の深さ

「被写界深度」
「被写界深度」 / (C)苑生/大洋図書/「被写界深度」製作委員会

2025年にFODオリジナルとして配信され、地上波でも放送された際にはその徹底した美意識と繊細な心理描写で大きな話題を呼んだドラマ「被写界深度」。Blu-rayBOXおよびDVDBOXが2月4日(水)に発売される同作は、近代ドラマのなかでも稀に見る高い芸術性を提示したことでも注目を集めた。カメラのレンズを通した歪な視線や、言葉にできない渇望、そして光と影のコントラスト。劇中で繰り返される言葉を用いない象徴的なシーンは、一度の視聴では汲み取りきれない重層的な意味を孕んでいる。映像表現やストーリー、キャストたちの演技から本作がなぜ多くの視聴者を惹きつけて離さないのか、その魅力を考察する。

■宇佐卓真・平野宏周と川崎僚監督が描く、静謐なる関係性の構築

「被写界深度」は苑生の同名漫画が原作のモラトリアム・ラブ・ストーリー。ある過去の出来事をきっかけに音楽を捨てて心を閉ざした高校生・早川秀一郎と、大好きなカメラにまっすぐ向き合う紺野遼平の間に生まれた繊細な心の揺らぎを映し出す。苑生初のWEB連載作品でありながら大反響を記録し、2017年には大洋図書よりコミックス化を果たしていた。

ドラマの核を成すのは早川を演じる宇佐卓真と、“紺ちゃん”こと紺野を演じる平野宏周が織りなす繊細なアンサンブルだ。同ドラマの完成披露イベントでは強烈なインパクトを残した名シーンが宇佐のアドリブであったと明かされたのだが、宇佐が平野に対して「信用してたんで。こっちからお芝居を投げても受け取ってくれるだろうなって」と語っていたのも印象深い。

早川というキャラクターは、いつもニコニコと愛想の良い“王子様”キャラ。周囲には友だちも多く、一見楽しい青春を送っているように見える。だがその実、あるできごとをきっかけに心の奥深くには誰も踏み込ませない一面を隠していた。そんな早川がある日屋上で出会ったのが、紺ちゃんこと紺野。強烈に惹かれる気持ちと“大好き”を真っすぐに追いかける紺野への嫉妬が入り交じり、2人の関係はドラマチックに変化していく。

■視覚情報の深淵に潜む、色と演技のシンクロニシティ

同作の特徴的な点といえば、「色」と「焦点」による表現。早川と紺野が出会う屋上から見える空の青さは鮮烈で、言葉にできない思いを抱えたまま向き合ったシーンの空は海とぼんやり混じり合い、ラストシーンの空はくっきり海との境目を見せる。セリフを削ぎ落としてもなお、2人がそのシーンのなかで抱えた想いを表すような美しい映像だ。

ドラマのタイトルである「被写界深度」とはカメラの用語で、「ピントが合う範囲」のことを指す。被写界深度が浅ければ焦点以外の景色はボヤけ、深ければ焦点前後の物もハッキリ映る。

物語のなかでもこの言葉は常にキーワードとして機能するのだが、ドラマでは実際の被写界深度を用いた映像表現も見どころの1つ。たとえば過去を思い返していた早川が紺野の声で現実に戻されたシーンで、段々紺野にもピントがあっていくようすなどはわかりやすい。

さらに2人が初めて本心からぶつかるひと幕ではお互いに集中しすぎて近くの手すりすらボヤけ、心がスッキリと晴れてから訪れた屋上の景色は水平線までくっきり映る。心の持ちようや2人の関係性をも、カメラの焦点1つが多彩に表現しているのだ。

色、焦点、視線、言葉のわずかなニュアンス。非常に些細なポイントで登場人物の心情や葛藤を表す同作は、とにかく何度見ても新たな発見をもたらしてくれる。

■映像美の極致が提示する、何度でも立ち返りたくなる演出の妙

同作について、主演の宇佐と平野は「周りにあわせて笑顔を作る少年」と「好きなことに真っすぐ向かう少年」というまったく対になるキャラクターをそれぞれ演じた。そして面白いことに、その正反対っぷりは演じる2人にも当てはまる。

たとえば前述の同ドラマ完成披露イベントで川崎監督は宇佐について「客観性を意識した演技が得意」、平野に対しては「直感型」と評している。また音楽情報サイトのインタビューでは、平野は自身のことを「家で考えていたことと、現場でやることが全然違うことになりがちです」と語った。役と自分を綺麗に切り替えるというよりは、現場で得たインスピレーションが演技に表れるタイプなのだろう。

一方で宇佐は台本などをもとに役を深く理解し、現場までしっかり“キャラクターの感情”を用意してくるタイプ。カメラが回ればカチッとスイッチが入り、キャラクターに入り込めるようだ。

またコミュニケーションについても宇佐は「苦手」と語っており、そのうえで平野の明るさや話しかけやすさを「うらやましい」と語っている。見事に反対な2人が生み出した化学反応は絶大で、宇佐は普段はやらないというアドリブが同ドラマには多いそう。第1話の2人が“屋上友だち”として交流しているシーンでは、「紺ちゃんが立った後、全部アドリブ」だったと明かしている。

アドリブシーンの軽快さ、映像表現の緻密さ、眼差し1つとっても見どころの多い同作。2026年2月4日(水)に発売されるBlu-ray BOX&DVD BOXにはこうしたこだわりの裏側を明かすメイキング映像や、ビジュアルコメンタリー(最終話)、第4話早川のライブシーンフルカットver.エンディング曲「眩」を使用した特別映像などが収録されるという。

第1話と最終話で映される空の色は、同じ場所からの風景なのに大きく異なる。細かな映像表現や演技に明確な“意図”が散りばめられている同ドラマは、ぜひ何度も見直してみて欲しい傑作だ。

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