イオン・ヴェルノール布施の1階。買い物帰りのカートの音が遠ざかるなか、「喫茶モア」は変わらずそこにある。
大きな冷蔵庫に並ぶ果物たち、猫足テーブル、甘いミックスジュースの香り。昭和と令和のあいだで、時間がすこしゆるむ。布施の日常に、さりげなく混ざりこんでいく、そんな喫茶店。

色づく冷蔵庫の前から、今日がはじまる
朝、ジュースのために果物を切る音がする。

「喫茶モア」の冷蔵庫は、店の顔みたいなものだ。大きなガラス戸の向こうで、季節のフルーツが静かに主張している。バナナ、メロン、オレンジ、パイン。今日は少しだけマンゴーも。
昭和の面影が残るイオン・ヴェルノール布施の1階。
その一角にあるこの店は、どこか家のリビングのようで、初めて来たのに不思議と落ち着く。入り口すぐのソファに腰を下ろせば、背中に重みがかかる。そのまま、深呼吸。なんだかいい日になりそうだ。
飲む、というより、食べるに近いジュース

注文が入るたび、果物を手に取る。ジューサーの音が、やけにいいリズムで響く。
喫茶モアのミックスジュースは、ただの「懐かしドリンク」じゃない。果物が熟れきった、まさに“飲みごろ”の状態で使われているから、口にふくんだ瞬間にまるで果物そのものがとけていくみたいだ。

実はこの“ミックスジュース”という飲みもの、大阪の果物屋さんがはじまりだといわれている。
売りものにはできないくらい熟れた果物を捨てずに、おいしく活かせないか。そんな発想から生まれたのが、いろんなフルーツをまぜたこの一杯。「もったいない」からはじまったやさしさが、今も大阪の喫茶店文化の中で息づいている。

喫茶モアのそれも、果物が主役。オレンジジュースは果汁100%。お好みでシロップももらえるけど、甘さは、果物の力だけでいい。
「甘いのが苦手な人も、ここのは飲めるって言うねん」そう笑うのは、ずっとここで働いているという女性スタッフ。

濃厚なマンゴージュースや、ヨーグルトと合わせたドリンクも隠れた人気者。
一口目のあとに、思わず誰かを連れてきたくなる味。店内にはその「誰か」がきっといたのだろう。今日は3世代で来ている家族もいた。
