日本弁護士連合会は1月28日、熊本地裁がハンセン病隔離法廷で死刑判決が下された「菊池事件」の再審請求を同日に棄却したことについて、会長声明を発表した。憲法違反を認めながら再審を認めなかった決定を「憲法違反の刑事裁判による死刑執行を容認することになり、断じて許容できない」と強く批判している。
菊池事件は、1952年7月に熊本県で発生した殺人事件で、ハンセン病とされた被告人が殺人の罪などに問われた。刑事裁判は熊本県の療養所などに設置された特別法廷で行われ、被告人は無実を訴えたが死刑判決が下され、1962年9月に死刑が執行された。その後、2021年に遺族が再審請求を行っていた。
●「極めて屈辱的で非人間的な扱い」
日弁連は声明で、ハンセン病隔離法廷が「ハンセン病患者に対する偏見・差別に基づき個人の尊厳を根本から冒すもの」であり、明らかに憲法13条(個人の尊厳)、14条1項(平等原則)、37条1項・82条1項(裁判の公開原則)違反だったと指摘した。
声明によると、菊池事件の法廷では、消毒液の匂いが立ちこめ、裁判官・検察官・弁護人はいずれも「予防衣」と呼ばれる白衣を着用し、長靴を履き、手袋を付けた上で調書や証拠物を火箸等で扱うという「極めて屈辱的で非人間的な扱い」がなされた。また、被告人が否認しているにもかかわらず、一審の弁護人は公訴事実を争わず、適正な刑事弁護を受けられなかったという。
●「憲法違反の刑事裁判による死刑執行を容認する」
日弁連は、今回の棄却決定は、憲法違反を認めながら「確定判決の証拠関係等に変動はない」として再審開始を認めなかったとして、「憲法上の手続規定は、適正な事実認定のために不可欠な権利を被告人に保障したものであるから、これらの権利が保障されなかったこと自体が事実誤認の徴表といえる」と指摘。「本件について再審の門戸を閉ざすことは、憲法違反の刑事裁判による死刑執行を容認することになり、断じて許容できない」と強く批判した。
その上で、「死刑制度の廃止及び手続の憲法違反を再審事由として規定することを含めた再審法の改正等、えん罪を防止・救済するための制度改革の実現を目指して最大限の努力を続けていく」としている。

