税負担の面から介護費用を抑える方法

介護費用は、サービスの利用調整だけでなく、税金の控除申請によっても負担を軽減できます。
特に親の介護費用を子どもが負担している場合、適用できる控除は意外と多いものです。ここでは、見落としがちな4つの制度を解説します。
医療費控除
医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額(原則10万円)を超えた際、超過分を所得から差し引ける制度です。
病院の治療費だけでなく、介護に関連する以下の費用も対象です。
医療系サービスの自己負担分
福祉系サービスの自己負担分
特別養護老人ホームの利用料
おむつ代
医療系とは訪問看護や老人保健施設などのことで、福祉系とは訪問介護やデイサービスなどを指します。
重要な点は、福祉系サービスは単独では対象外となることです。ケアプラン内で医療系サービスとセットで利用する場合に限り、合算して申告できます。
また、特養の費用は食費・居住費を含めた自己負担の半額相当が対象です。おむつ代は、かかりつけ医に依頼して「おむつ使用証明書」を発行してもらう必要があります(2年目以降は自治体の確認書で代用可能な場合もあります)。
生計を一にする家族の分も合算できるため、所得が高い人がまとめて申告すると効果的です。
参照:
『医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価』(国税庁)
『おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて』(国税庁)
障害者控除
障害者控除は、本人や扶養家族が障害者の場合に受けられる所得控除です。実は、障害者手帳を持たない方でも、要介護認定を受けていれば対象になる可能性があります。
自治体が発行する「障害者控除対象者認定書」があれば、手帳がなくても控除が適用されます。
区分 控除額(所得税) 対象者の目安
障害者 27万円 要介護1〜3程度
特別障害者 40万円 要介護4・5程度
同居特別障害者 75万円 寝たきりの親と同居など
※認定基準は自治体により異なります。要介護度だけでなく、日常生活自立度や認知症の程度なども考慮されるため、詳細は市区町村窓口にお問い合わせください。
この認定書は自動的には届きません。年末調整などの前に、自治体窓口への申請が必要です。
過去5年分まで遡って申告できるため、これまで制度を知らずに手続きしていなかった方は、一度確認してみましょう。
参照:『No.1160 障害者控除』(国税庁)
社会保険料控除
1年間に支払った社会保険料の全額が所得から控除される制度です。親の介護保険料などを子が支払うことで、子の所得から控除できる場合があります。
通常、親の保険料は年金から天引きされますが、親の収入が少ない場合は節税効果がありません。そこで、以下の変更を検討します。
支払いを口座振替に変更する
振替口座を子の名義にする
上記の手続きにより、子が実質的な負担者となり、自身の控除として申告できます。
ただし、介護保険料は原則として口座振替への変更が認められていません。一方で、75歳以上の方の「後期高齢者医療保険料」は変更できる自治体が多いため、まずはそちらの切り替えを相談してみましょう。
参照:『No.1130 社会保険料控除』(国税庁)
扶養控除
扶養控除は、養っている家族がいる場合に適用される所得控除です。同居していなくても、生活費の送金などを行い「生計を一にしている」と認められれば、別居の親も対象です。
親を扶養に入れるための要件は、年間の合計所得金額が48万円以下であることです。年金収入(公的年金などに係る雑所得)のみの場合、以下の金額が目安です。
65歳未満:年金収入108万円以下(合計所得48万円以下)
65歳以上:年金収入158万円以下(合計所得48万円以下)
また、控除額は親の年齢や同居の有無で変わります。親が70歳以上の場合、別居であれば48万円ですが、同居している場合は58万円に増額されます。将来的に同居を検討する際は、この節税メリットも考慮に入れるとよいでしょう。
遺族年金や障害年金は非課税のため、判定に含まれません。見かけの収入が多くても、老齢年金が少なければ扶養に入れる可能性があるため、親の年金通知書をチェックしてみましょう。
参照:
『No.1180 扶養控除』(国税庁)
『No.1182 高齢者を扶養している人が受けられる配偶者控除や扶養控除』(国税庁)
介護費用を抑えるための今後の選択肢

将来、身体機能の低下や認知症の進行により費用負担が増すことに備え、あらかじめ選択肢を知っておくことが大切です。ここでは、将来の備えとして知っておくべき3つのポイントを解説します。
公的な介護施設に入居する
施設への入居が必要になった場合、有料老人ホームなどの民間施設ではなく、公的施設を選ぶことで費用を大幅に抑えられます。公的施設は、所得に応じた負担軽減制度が充実しているためです。
主な公的施設は以下のとおりです。
特別養護老人ホーム(特養)
介護老人保健施設(老健)
特養は原則として要介護3以上が入居条件ですが、民間施設に比べて月額費用が安価です。人気が高く待機者が多い地域もあるため、早めにケアマネジャーへ相談し、申し込みのタイミングを確認しておきましょう。
介護施設の多床室を利用する
施設に入居する際、部屋のタイプ選びは月額費用に直結します。個室は快適ですが費用が高くなるため、予算を優先する場合は以下の居室タイプを検討してください。
多床室(相部屋)
従来型個室
多床室はカーテンで仕切られており、個室に比べて月々の支払いを数万円単位で節約できます。施設を探す際は、パンフレットや見学時に多床室の空き状況を確認するようにしましょう。
ケアプランを見直す
要介護度が上がっても、支給限度額いっぱいまでサービスを使う必要はありません。漫然とサービスを継続するのではなく、定期的に内容を見直すことが重要です。
家事援助の回数を減らす
保険外のサービスを活用する
家族が訪問できる日はサービスを休止したり、ネットスーパーなどを活用したりすることで、支出を抑えられる場合があります。ケアマネジャーに「費用を抑えたい」と率直に伝え、代替案がないか相談してみましょう。

