マイコプラズマ肺炎は、しつこく続く乾いた咳が特徴の感染症です。一般的には発熱を伴うことが多いですが、熱がなくても発症している場合があります。マイコプラズマ肺炎は風邪と症状が似ているため、発熱がない場合は気付きにくく、受診のタイミングに迷うこともあるかもしれません。
本記事は、熱がない場合でもマイコプラズマ肺炎が疑われる理由や症状の特徴、受診の目安と自宅でのケアについて解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
マイコプラズマ肺炎と発熱の関係

マイコプラズマ肺炎の主な症状を教えてください
マイコプラズマ肺炎の主な症状は咳と発熱です。
発症初期は全身のだるさや頭痛、発熱といった風邪に似た症状が現れます。咳は発症から数日遅れてから始まる場合もあります。マイコプラズマ肺炎の咳は、たんが絡まない乾いた咳であることが多い点が特徴です。咳は徐々に酷くなり熱が下がった後も3〜4週間ほど続くことがあります。ほかにも、呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューといった音が聞こえることがあります。これは喘鳴(ぜんめい)と呼ばれ、マイコプラズマ肺炎に伴ってみられることのある症状です。
多くの患者さんは軽症で経過しますが、まれに重症化することがあります。また、中耳炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を併発する場合もあります。
参照:『Clinical Features of Mycoplasma pneumoniaeInfection』(CDC)
マイコプラズマ肺炎で発熱する方の割合を教えてください
発熱は咳とともにマイコプラズマ肺炎の代表的な症状です。発症すると約80〜90%の患者さんに発熱がみられるといわれています。マイコプラズマ肺炎の患者さんは小さなお子さんや若い成人の方に多く、発熱は年齢を問わずにみられます。
一方で、発熱の程度は年齢差がある可能性があります。家族内で感染が広がった症例を調査した研究では、成人の最高体温が平均38.6度であったのに対して、子どもは平均39.1度と、子どもの方がより高い傾向があったとする報告もあります。
発熱は多くの場合、発症から数日〜1週間程度で自然に治まっていくことが多いとされています。一方で、高熱が長く続くことや、治療を開始しても発熱が続く場合もあります。
参照:
『Epidemiology, Characteristics, and Treatment Outcomes of Mycoplasma pneumoniae Pneumonia in Hospitalized Adults: A 5-Year Retrospective Cohort Study』(Open Forum Infectious Diseases)
『Clinical Profile of Patients Admitted with Mycoplasma Pneumonia Infection in a Tertiary Care Centre』(Indian Journal of Critical Care Medicine)
『Comparison of the clinical characteristics in parents and their children in a series of family clustered Mycoplasma pneumoniae infections』(BMC Pulmonary Medicine)
『Treatment modalities for fever duration in children with Mycoplasma pneumoniae pneumonia』(Scientific Reports)
熱なしでもマイコプラズマ肺炎の可能性はありますか?
発熱がなくてもマイコプラズマ肺炎を発症している可能性はあります。発熱はマイコプラズマ肺炎の主要な症状ですが、患者さんの約10〜20%は、明らかな発熱を伴いません。
また、症状の現れ方には個人差があり、発熱しても高温にならない場合や、微熱程度にとどまる場合もあります。このようなケースは、発熱していることに本人や家族の方が気付かないまま、咳や倦怠感などの症状だけが続くように感じることもあります。
参照:
『Epidemiology, Characteristics, and Treatment Outcomes of Mycoplasma pneumoniae Pneumonia in Hospitalized Adults: A 5-Year Retrospective Cohort Study』(Open Forum Infectious Diseases)
『Clinical Profile of Patients Admitted with Mycoplasma Pneumonia Infection in a Tertiary Care Centre』(Indian Journal of Critical Care Medicine)
熱なしでもマイコプラズマ肺炎が疑われる状況と見分け方

発熱していなくてもマイコプラズマ肺炎が疑われるのはどのようなときですか?
マイコプラズマ肺炎の特徴はしつこく続く咳です。発熱が目立たなくても、たんの絡まない乾いた咳が数週間続くようなときは、マイコプラズマ肺炎の可能性があります。
特に、マイコプラズマ肺炎が流行している時期や、家族や学校、職場など身近にマイコプラズマ肺炎と診断された方がいる場合は、発熱がなくても感染の可能性を念頭においておきましょう。
自分でマイコプラズマ肺炎かどうかを見分けることはできますか?
マイコプラズマ肺炎はほかの肺炎や風邪との区別が難しい病気です。症状が似ているため、医師であっても診察だけで簡単に診断することができません。そのため、自分でマイコプラズマ肺炎かどうかを見分けることは難しいといえます。
適切な治療をせずに放置すると、症状が悪化する可能性もあります。疑わしい症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
参照:『肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針』(日本マイコプラズマ学会)
病院でのマイコプラズマ肺炎の診断基準を教えてください
病院でのマイコプラズマ肺炎の診断は、症状や経過、検査結果などから判断されます。
まず、診断の手がかりとなるのが症状と経過です。発熱や倦怠感、長引く咳といった特徴的な症状と経過がみられる場合、マイコプラズマ肺炎が疑われます。そのうえで、以下のような検査を診断の補助として組み合わせます。
迅速抗原検査
血液検査
PCR検査
画像検査
迅速抗原検査は、喉や鼻のぬぐい液から、マイコプラズマ肺炎の原因である肺炎マイコプラズマが検出されるかを調べる検査です。短時間で結果がわかりますが、発症初期には陰性になることもあります。
PCR検査は、病原体の遺伝子を取り出して調べる検査で、迅速抗原検査に比べて正確性が高い方法です。デメリットは結果がわかるまでに時間がかかる点です。
このように、マイコプラズマ肺炎の診断は検査結果と症状、医師の所見などを総合して行われます。
参照:『肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針』(日本マイコプラズマ学会)

