「あぁ、実はね……結婚式の前払い金のことで…。健太には、貸したお金を振り込んでほしいってお願いしてるんだけど……」
すると、一瞬の沈黙の後に義妹は真相を話し始めた。
「ご心配おかけしてすみません。実は、うちの両親からは『お祝い金として渡すから返さなくてもいい』って言われたんです。だからうちの両親からもらったお金はそのまま、新婚旅行と新生活の資金にしようと思ってて…」
淡々と話していく義妹だが、一向に私への返済の話は出てこない。
「え~でも、ちょっと言いにくいんですけど、謙太さんのご両親からは援助してもらってないので、それもどうなのかなって…。援助は同額の方が、あとあとすっきりするかなっていうか…」
そこから先は、ずばり「返さない」とは言わないまでも「返さなくていいですよね?」というオーラ全開の弁明が続いた。私はどう返せばいいかわからず、気の抜けた相槌をうつくらいしかできなかった。
義妹からの説明は理解に苦しむ。仮に義両親がが返さなくて良いと言っていたとしても、それは義両親のお気持ちであって、私が貸したお金の返済は別問題だ。義妹の謎論理に動揺と憤りを感じながらも、そのことを伝えてみた。
「……そうだったんだ。ただ、愛梨さんのご両親から借りたお金は良くても、うちから貸したお金は返してほしいよ。申し訳ないけど、そんな余裕があるわけじゃないんだからさ」
荒れる心を何とかおさめつつ、慎重かつていねいに義妹に提案する。
「そうなんですね…。だったら健太さんの家からは支援なしで、うちだけ支援したってことでいいですか?私たちとしては、今後、何かしらの方法で支援していただいた分を還元していく方が平等かなとか思ったんですけど」
引き下がらない義妹の様子に、私はこれ以上の説得は無意味だと呆れてしまった。
「うちはそう思えないけど、愛梨さんの考えはわかったよ。新婚旅行楽しんでね」
そう心にもない言葉を力無く吐き出して通話を終えた。夫にも相談して何とか捻出した大金は、もう手元に戻ってこないのだろうか。あまりにも不本意で情けない…。
義妹の「ナゾ理論」にドン引き…
美雪さんは、弟夫婦の門出を祝う気持ちがあったからこそ、ムリしてお金を工面し、貸すことにしました。ですが、思わぬカタチで裏切られてしまったのです…。
美雪さんが言う通り、返済問題と両家からの支援はまったく別の話です。それぞれの家庭にも事情があるため、一律でお金の援助を求めるのは、図々しいですね…。
ですがこのあと、事態は一転します。美雪さんが父に返済のことを相談したところ、翌日には弟・健太から電話がかかってきたのです。
弟夫婦の態度が一変。猛省したワケとは?
「あっ、姉ちゃん?返せてなかった結婚式のお金なんだけど、返せそうだから、その……どうやって払えばいいかな?」
電話口の弟の慌てた口調には、心からの申し訳なさに後悔、そして恐れが混じっているように感じた。
「返してくれるのはうれしいけど…そんなに慌ててどうしたの?」
私は落ち着いて弟にたずねる。
「愛梨の両親から『貸したお金は返さなくてもいい』って言われてたのが、急に取り消されてさ……」
「取り消された?」
「そう……『親族から無心するような真似して恥ずかしい』って、電話口で怒鳴られて……」
当時の状況を思い出しながら話したのか、説明する弟の声は次第にか細くなっていき、最後には泣き出しそうな様子だった。
「大変だったんだね。でもまあ、愛梨さんのお父さんの言うことはもっともだと思うけどね…」
私は敢えて、嫌味っぽく弟にそう告げた。
「……本当に、ごめんなさい」
後悔と申し訳なさが滲む弟のその言葉に、私は心が晴れる感覚がした。その後、義妹からも電話とメッセージでていねいな謝罪があった。ここまで事態が急転したのには、父の働きがあったのだ。
美雪さんの父に相談した翌日、すぐに健太から電話がかかってきました。義実家から「取り消し」されたうえに、厳しく叱責された2人は、ようやく今回のことを猛省したようです。
美雪さんの父は、今回の返済問題をどのように解決へと導いたいのでしょうか?

