エジプト映画①『アンノウン: ピラミッドが語る古王国の記憶』(2023)
参照:『アンノウン: ピラミッドが語る古王国の記憶』(2023)
古代エジプト文明やピラミッドに興味がある方におすすめしたい、隠れた名作ドキュメンタリーがあります。広大なサッカラの砂漠を舞台に、ザヒ・ハワス博士の率いる発掘チームを追った『アンノウン: ピラミッドが語る古王国の記憶』です。
ピラミッドにまつわる歴史的大発見は、かつて常に外国人の手によるものでした。「ピラミッド研究は外国人の天下」という現状への悔しさをバネに、「自らの手でエジプト学を変える」という執念で挑む姿は、見る者の胸を熱くします。
99%が徒労に終わろうとも、たった1%の発見のために人生を捧げる研究者たちは、少年のように輝いていました。
そして2500年の時を経て、彼らは完全な状態の「パピルス」を発見します。そもそもパピルスとは、カミガヤツリ(パピルス草)の茎の繊維を重ねてつくられたもので、「ペーパー」の語源となった記録媒体です。
古代エジプト文明といえばミイラをイメージする方が多いでしょう。実は古王国時代(紀元前2680年〜紀元前2145年ごろ)まで、死後の再生・復活の権利は、一部の支配者層に限定されていました。
《フネフェルのパピルス》(紀元前1275年ごろ)/大英博物館、審判の場面, Public domain, via Wikimedia Commons.
しかし、オシリス信仰の大衆化とともに、人工ミイラの製作は下層の人々にも普及。第2中間期(紀元前1794年〜紀元前1550年ごろ)末に「死者の書」が成立した結果、古代エジプトの死生観が確立しました。
「死者の書」は葬送文書であり、冥界(ドゥアト)へ旅立った死者を来世で復活させる、約200章の呪文で構成されており、パピルスの巻物に記されました。
死後の世界への道には、門や洞窟、丘があり、呪文を唱えることで、それらを守る悪霊や怪物を調伏できると考えられていたのです。
いよいよパピルスを開封する瞬間、研究者の額には大粒の汗が浮かびます。2500年前の人々の祈りと、失われた知識に触れる畏敬の念を感じました。古代のロマンと発掘のリアルが詰まった本作を、ぜひ多くの人に観てほしいと思います。
エジプト映画②『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』(2015)
参照:『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』(2015)
シリーズ最終章となる本作ですが、単体でも十分に楽しめるエンターテインメント作品です。1930年代、エジプト遺跡発掘の現場から、物語は幕を開けます。
「この墓を荒らせば終わりが来る」という現地民の忠告を無視して埋蔵物を持ち出す調査団。この冒頭シーンは、歴史的遺産に対する現代人の姿勢に、警鐘を鳴らしているようにも感じられます。
物語の鍵を握るのは、黄金に輝く石板です。3×3のマスに区切られており、鳥や人物の形をした記号が刻まれています。
これが古代エジプト文明で用いられた「ヒエログリフ(聖刻文字、神聖文字)」です。文字は音と意味の両方を表し、約800文字から構成されます。なかでも24文字が標準的なアルファベットとして使用されたそうです。
いつからヒエログリフの使用が始まったのかは解明されていませんが、1898年に出土した《ナルメルのパレット》(紀元前3200年ごろ)を最古とする説が有力です。
パレットとは、アイシャドウの顔料として孔雀石や方鉛鉱をすりつぶすための石板ですが、これは高さ64センチメートルと大きいため、王の偉業を神殿に奉納したものだと考えられています。
《ナルメルのパレット》(紀元前3200〜紀元前3000年ごろ)/エジプト考古学博物館, Public domain, via Wikimedia Commons.
映画のお話に戻りましょう。アメリカ自然史博物館では、この石板が変色し始め、魔力が暴走してしまいます。
「ネアンデルタール人は火の消し方を復習」「ローマ兵士はストレッチを」と、ワクワクしながら準備していた光景から一転、プラネタリウムのお披露目パーティーは大混乱に。収蔵品たちが乱闘し、招待客が逃げ惑う事態となります。
事態を収拾するため、主人公のラリーは大英博物館へ。ラリーと瓜二つのネアンデルタール人「ラー」や、ラリーの息子・ニッキーを気に入る「ランスロット卿」など、個性の強すぎるキャラクターがドタバタ劇を繰り広げるのでした。
「博物館が好き」「古代エジプト文明に興味がある」という方はもちろん、新しい道へ進もうとしている方にも、ぜひこの映画を観てほしいです。
終盤に登場する「君の役目は終わった。次の冒険が待っている。心を踊らろ」というセリフが、父親として警備員として奔走してきたラリーを通じて、わたしたちの背中を押してくれることでしょう。
